赤緑続唱ランプ構築録

  • 2021.1.8
    デッキ紹介
    OONS

    ※動画や記事の公開タイミングとは少しズレますが、2020/12中旬に構築したデッキの構築録になります。
    そのため、メタゲーム事情などはそのころに準拠ということで。

     

    ■はじめに

     

     

    この動画の撮影に使用したデッキリストの構築録になります。
    デッキ自体の概要説明だけ見たければこちらの記事をどうぞ。→ 記事

     

    ほぼイチから構築したこともあり愛着もこだわりも強く、メタゲーム的に淘汰されなければ今後も個人的に使って行きたいデッキに仕上がりました。

     

    ■邂逅

    筆者が某商人と肩を組んで横浜で遊んでいた時(→ 記事)、新たな出会いがありました。

     

    《乗り込み部隊》《苛立つアルティサウルス》という続唱クリーチャーです。

     

    たまたま黒単ベースで相性有利なデッキを握っていたためこちらの勝利で終わったものの、続唱でデッキトップをめくる様を見て「いいなぁ…」と大変ウズウズしつつ、元々他フォーマットではランプをメインに使っていた血筋もあり、大会後すぐにこれらを活かした続唱ランプデッキの構築を始めました。

     

    ■根幹的な思想

    派手なデッキを組む上で気にしたいこととして、「派手な動きを決めたら、ちゃんと勝ちたい」という部分があります。

    もう少しそれっぽい言い方に変えるなら、

    ・”決めたから満足”ではなく、後先考える

    ・アクションはゴールではなく手段、その先の勝利がゴール

    …といったところです。

     

    これを前提として据えたうえで、構築にあたり色々な判断をして行きます。

     

    ■思想の詰め

    やりたいことを具体的に深掘りしつつ、構築を進めていきます。

     

    ①運を絡ませず勝ちたい

     

    ここが今回の構築の最も特徴的かつ重要視している部分になります。

     

    例えば、7マナから《苛立つアルティサウルス》を唱え、《楽園の拡散》がめくれて、その後も大したものを引かず何も出来ないまま負け。

    こういう負け方をすること自体も嫌ですし、逆にそういうことが起きるデッキで運良く有効牌ばかりめくれて勝ったなら、それはそれで対戦相手に「運がよかっただけ」という印象を持たれることでしょう。

    マジックというゲームの性質上、どんなデッキであっても運はつきものですが、自分から運要素によるリスクとリターンを増した構築を使う場合、これについては覚悟しなくてはいけません。

     

    …しかし自分は、これが嫌でした。特に後者が嫌すぎました。

    せっかく勝っても「運だけの奴に負けた」と言われてストレスを溜めてしまっては、それは完全な勝利とは言えません。

    勝利をゴールとする以上、「勝ったけど相手は負けを認めていない」状態ではなく、お互いが納得する形での勝利を収めたいところです。

     

    そのため、いわゆる「ハズレ」を排除し、続唱を「面白ガチャ」ではなく「アドバンテージ&踏み倒し」にすることで、運デッキからの脱却を図ることにしました。

    つまり続唱クリーチャーを、「確実にアドバンテージを稼きつつ踏み倒してツーアクション取ってくれるクリーチャー」という存在として採用することを目指します。

     

    …とはいえ、6〜7ターン耐えるためのコントロール手段を入れると続唱と噛み合わないため、マナ加速手段は必要です。

    つまり、《ラノワールの幻想家》《眷者の装飾品》という”続唱でめくれても嬉しい、アドバンテージを稼げるマナ加速”の採用に至ります。

     

    ②息切れしたくない

     

    続唱クリーチャーは、ハズレのない構築にすれば自動で1つアドバンテージを取れますが、単にそれだけではすぐ息切れしてしまいます。

    《グリセルブランド》までは流石に求めませんが、除去耐性のないファッティである以上、1アドだけでなくその先のアドバンデージ・勝ち手段の供給までしっかりやってくれないと元が取れません。

    また、続唱の強みはアドバンテージだけでなく踏み倒しによるテンポ得にもあります。それを活かすためには、ただアドバンテージを稼ぐことに特化した《予言》系の動きではなく、盤面にしっかり強烈に影響して欲しいところです。

     

    つまり具体的な要望をまとめると、

    ・それ自体が勝てる盤面を形作る強力な駒になる

    ・それ以降もビッグアクションを繰り返すことに繋がるアドバンテージエンジンになれる

    ・(ついでに、大前提として)普通に唱えても悪くない

    ということになります。

     

    そう、統治者クリーチャーですね。

    元々サイズに定評のある《トレストの随員》、最近追加された《真紅艦隊の准将》を今回は採用します。

    先程のあまりにも無茶な要望をしっかり満たしており、特に到達を持つ《苛立つアルティサウルス》との噛み合いは芸術的です。

     

    もちろん飛行などで殴られ奪われるリスクはありますが、どれだけ奪われようともこちらが毎ターン統治者を唱えればマイナスにはならないどころか、カード1枚あたりのバリューでこちらが勝る限りプラスに傾きます。

    そういうわけで、マウントを取れるまでは統治者4×2枚体制+続唱4×2枚耐性から何度も呼び出してカバーすることとしました。

    ※「そのやり取り、こっちライフ削られてない?」という疑念は、次章で解消するので少々お待ちを。

     

    また、こちらから統治者争いを仕掛けずとも相手の方から統治者争いを仕掛けてくる昨今のPauper事情においては、「相手主導で置かれた統治者の奪い合いをどう制するか」という観点から目を背けることはできません。

    その観点においても、続唱デッキは守りを固めて殴り出すまでが遅いので、殴って統治者を奪うことを目指すより、盤面展開しながらCIPで統治者を奪って守りを固める方がアプローチとして適切と言えます。

     

    なお、ここまで話題に出していなかった《大渦の巨人》ですが、このコンセプトが定まった段階で、重い上に統治者争いに役立つ速攻も到達も持っていないため採用候補から去りました。

     

    ③ライフレースで無理矢理押し切られたくない

     

    頑張ってマナを伸ばして続唱クリーチャーを展開したにも関わらず、飛行クリーチャーや本体火力、もしくは大量に横並びしたクリーチャー陣を止めきれず結局削り切られてしまう…というのは、「決めたらちゃんと勝ちたい」という原則に反します。

     

    そのため、それを防ぐライフ回復手段や、優秀なブロッカーを採用しました。

    マナ加速が8枚では不安があったので《清純のタリスマン》、デッキ自体の動きを阻害しない《光輝の泉》の採用です。

    また、《暗影の蜘蛛》は統治者の奪い合いにおいても強力であり、かつファッティ戦略に強い黒系除去コントロールの布告除去に対し耐性を持てるため、噛み合い良好です。

     

    また、多少不純物になってしまいますが、上の緩やかなライフ回復やブロッカーでは対応が難しいアグロやコンボに速攻で削り切られてしまうことへの対策として、最低限の除去枠を割くことにします。

    まず、トロンやペストなど除去が腐る相手にも腐りにくい《削剥》を採用。

    クリーチャーもアーティファクトも置かない構築は、ゼロではないもののほぼ無いので、少ない枚数の採用であれば、続唱でめくれて腐る可能性はかなり低いといえます。

     

    《焦熱の連続砲撃》は、赤単やエルフなど数で押し切ろうとする相手への回答として。

    「続唱でハズレになりうるもんは採用しないんじゃないのかよ!」という声が自分の中でも響いていますが、アグロ以外相手であっても《スレイベンの検査官》やら《熟考漂い》やらを1体なり2体なり持っていければ続唱でめくれても損にはならないだろう。そして逆にタフネス2以下がいないような遅めの相手なら最悪これで1回くらいハズれてもリカバーできるだろう。という見込みでの2枚採用です。

     

    なおその際、《ラノワールの幻想家》だけ巻き込まれてしまいますが、続唱がキャストできている段階なら場にいる《ラノワールの幻想家》の価値は既に低く、その些細なリスクよりも横並び相手の大当たりとしてのリターンの方が大きいと判断しました。

    そもそも《ラノワールの幻想家》は着地時に1枚引いており、死んでもアドバンテージの損失は伴わないのでここは甘えていいと思います。

    (このあたりのプラマイ思想は、モダンのエメリアコントロール使用経験から引き継がれていたりします)

     

    ④デッキ単位でしっかり安定させたい

     

    重いクリーチャー陣とマナ加速を採用する都合で、何も考えず構築するとマナフラッドもマナスクリューが激しい不安定なデッキになってしまいます。

    これでは、せっかくハズレ無し続唱という安定志向のシステムを固めた意味がありません。

     

    となれば、終盤引いても続唱でめくれても悪くないタイプの潤滑剤が必要です。

    《突き止め》です。

    カード単位でみれば、このデッキの最も珍しい部分と言ってもいいかもしれません。

     

    序盤に土地、終盤にクリーチャーを探せる《紆余曲折》とかでもいいんじゃない?という声もあるかもしれませんが、役割を持ったマナファクトや除去呪文も採用しているこのデッキの調整役としては自由にトップ調整できる点がありがたいのと、中盤以降は他の枠で爆発的にアドバンテージを稼げるため中盤以降の上ブレ期待よりも序盤の調整力が大事、というのが《突き止め》を選んだ理由です。

    また、このデッキで最も強い序盤の動きは

    3T:マナ加速
    4T:マナ加速×2 or マナ加速+焦熱の連続砲撃
    5T:続唱なり4マナ域×2なり、やりたい放題

    いう動きですが、2Tに《突き止め》を唱えることでこの動きができる期待値を上げつつ、「4~5Tにこの動きができるのか」を事前に把握することで3Tに裏目のないアクションを取ることができ、押し付けデッキとして目指す最大効率での動きを支えてくれます。

     

    ちなみに、「《突き止め》採用ってことは、占術3を活かして続唱先を確定させるってこと!?すごい!」と思われるかもしれませんが、そもそもハズレが無い構築なのでその必要がありませんし、実際全然その使い方はしませんでした。

     

    ⑤(ちなみに)ランデスについて

     

    昨今のトレンドを見ると、続唱の先としてランデスカードを据えた構築が多々見られます。
    ただ、ランデスにする場合は続唱のハズレとなる 1マナのマナ加速を大量に採用しないと弱いため、今回のコンセプトには沿いませんでした。

     

    ■サイドボード

    苦手なデッキへの対応を考えていきます。

     

    ・横並びアグロ
    RDWや緑単ストンピィ、エルフなど。

    赤緑デッキの最もアツいアグロ対策、《焦熱の連続砲撃》の出番です。

    メインサイド合わせて4枚積みたいところです。

     

    ・バーン

    ゆったりしたデッキ共通の敵。

    メインからライフ回復要素を入れるとはいえ、さすがにバーン相手に足りる回復速度ではないので、《嵐の乗り切り》を入れて耐える必要があります。

    なお墓地にクリーチャーや土地が落ちにくいため、バーン対策目的での《ムラーサの胎動》は採用厳しいです。

    競合を挙げるならサイズも悪くない《ナイレアの信奉者》ですが、《嵐の乗り切り》の方が安定して活躍できそうなので、今回こちらを採用しました。

     

    ・呪禁オーラ、白単英雄的

    サイズで勝てない相手には勝ち筋が無いため、これらは《焦熱の連続砲撃》+《チェイナーの布告》で明確に対策していきたいところです。

    布告の採用は、ついでに厳しいペストの耐性を上げられるので良い感じです。

    マナが伸びやすいデッキなので、特に《チェイナーの布告》はフラッシュバックを活用しやすいのも噛み合い良好。

     

    ・親和

    シンプルなビートダウン自体は、展開が間に合えば堰き止めることはできます。
    ただ、長引いた末のエイトグシュートによる本体焼き切りを止めるすべが無いため、そのリソースを1枚でがっつり削れる《ゴリラのシャーマン》も採用します。
    競合としては《古えの遺恨》も序盤から強烈に動けるのですが、エイトグシュートを4点分しか削れないため今回はゴリラ。

     

    ・トロン

    割と愚直なデッキなので、こういうロック系デッキも普通に面倒です。

    一撃で吹き飛ばせる盤面を作ること自体はそう難しくないので、半端にランデスを差して輪作で避けられるより、《大祖始の遺産》でロック手段に対応したいところです。墓地対策ならついでに拷問生活などメタ外の面倒なデッキも見ることができます。

     

    ・追加の除去

    フェアリーやボロスの横展開に対して《焦熱の連続砲撃》だけでは足りないように思い、ついでにペストにもある程度効く《枝分かれの稲妻》を最後に1枚追加しました。

    ここは正直なところ肌感覚で決めていて無限に怪しいので、《ファリカの献杯》《もつれ》など他のカードにいずれ枠を譲るかもしれないです。

     

    ・スリヴァー
    呪禁オーラや白単英雄的と同じく無理です。
    が、スリヴァーを対策するために確定除去を大量採用したりするとその分呪禁オーラや白単英雄的への耐性が落ちてしまうこともあり、今回ここだけは切り捨てました。
    《もつれ》等のフォグ系呪文をうまく刺せれば勝機はあり、これならオーラや英雄的にもある程度使えるかもしれませんが、続唱でめくれた時に自我を保てる自信が持てません。

     

    ■最終リスト

    これらの思想を煮込んで75枚に煮詰め、最終的にこのような形に落ち着きました。

    少なくとも「回るかどうか」という意味では「めちゃくちゃ綺麗に回る」ところまで到達しており、思想を体現する75枚にはできたのかなと思います。

     

    …あとはそもそも思想が正しいかどうかですね。

    こればかりは、今後回して確かめていくしかないと思います。

     

    ・土地
    4:《興隆する木立/Thriving Grove》
    4:《灰のやせ地/Ash Barrens》
    2:《グルールの芝地/Gruul Turf》
    6:《森/Forest》
    3:《山/Mountain》
    1:《沼/Swamp》
    3:《光輝の泉/Radiant Fountain》

     

    ・土地供給/マナ加速
    4:《突き止め/Track Down》
    3:《ラノワールの幻想家/Llanowar Visionary》
    3:《清純のタリスマン/Pristine Talisman》
    3:《眷者の装飾品/Bonder’s Ornament》

     

    ・統治者
    4:《暗影の蜘蛛/Penumbra Spider》
    4:《真紅艦隊の准将/Crimson Fleet Commodore》
    4:《トレストの随員/Entourage of Trest》

     

    ・続唱
    4:《乗り込み部隊/Boarding Party》
    4:《苛立つアルティサウルス/Annoyed Altisaur》

     

    ・不純物
    2:《削剥/Abrade》
    2:《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》

     

    ・サイドボード
    4:《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》
    3:《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》
    3:《嵐の乗り切り/Weather the Storm》
    3:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
    2:《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》

     

    ■タッチ色について

    黒ではなく、青を触って《熟考漂い》というのも、面白い選択肢だとは思います。

    想起キャストを強めに視野に入れつつ、続唱でめくれた際は2/2飛行+2ドローなので、潤滑剤と続唱からの強ムーブを両立できます。

     

    ただ今回の構築思想では、3マナ域はマナ加速に動きたいこと、統治者クリーチャーの方がアドバンテージ枠としての採用条件に噛み合っていることから、採用していません。

    また同じ青では《蒼穹艦隊の提督》も、毎ターン統治者を唱える思想とアンブロッカブル条件が嚙み合わないことに加え、ブロッカーとして《グルマグのアンコウ》とぶつかり稽古もできないため、《真紅艦隊の准将》に枠を譲っています。

     

    ■課題

    《失墜》が思っていた以上に面倒でした。

    《失墜》の最も重要な機能である統治者そのものは奪いに行ける構築にしてあるのですが、「青のデッキがバウンスでなくサイズを問わない確定除去をメインから採用している」ということが、サイズに寄せたこのデッキだとかなり強く機能してきて結構厳しかったです。

    毎ターン統治者を奪い合うとしても、こちらのアップキープにはまだ統治者クリーチャーを唱えていないので、結局寝かされたクリーチャーが起きないんですよね。

     

    その対策として、メインかサイドかまでは定めていませんが、《枝細工下げの古老》が結構良い感じかな?と考えているのが現状です。

    軽量呪文で誤魔化す手段は多々ありますが、青いデッキに漏れなくいる《呪文づまりのスプライト》の圏内に入りやすいかどうかや、こちら主導で先置きできるかどうか、続唱でめくれた場合の相性など考えると、これが適切な気がしています。

     

TOP

© Copyright pauperMTG.com