晴れる屋さんで行われた、第一回Pauper神決定戦に向けた思考録です。
当日レポの部分以外は、基本的に時系列通り(つまり神決定戦以前)に、実際に色々考えながらその場で書き溜めておいたものになります。
先に言うと、自分の戦績自体は5-4-0の66位/268人で、大して誉められたものでもありません。5戦目で2敗(3-2-0)に達してしまい、SEに上がれる可能性はそこで潰えました。
そのため、「競技で勝ちたい人の参考になる、成功者の思考メソッド共有」としての記事ではなく、成功も失敗も関係のない、「カジュアル勢が本気で競技イベントに臨んだ軌跡」としての記事になります。
全部まとめるとバカ長くなるので、まず今回の記事では、デッキ選択の話から。
自分は普段、「”やりたいことをやる”という前提の中で、全力で勝ちに向かう」というスタンスでMTGに臨んでいます。
わかりやすい比較対象として、完全なスパイクの思考は「勝利を目指す最適解を、全ての選択肢から探す」だと思いますが、自分の場合は「自分の望むゲーム体験(使いたいカード、やりたい動きなど)を満たすために何をしよう」がまず先に立ち、その後に「その中で勝利を目指す最適解を探る」が続く形です。
ジョニー・ティミー・スパイクに片足ずつ漬かっている、半端だけど楽しい生き方をしています。
そういう自分が競技イベントに参加する上で、まずは「何をしたいか」を定める必要があると考えました。
以下のような目標の、どれにどれだけ重みづけをするのか?によって、握るデッキも調整も、最適解が変わってくるからです。
①. 楽しみたい
②. 楽しませたい(場を盛り上げたい、好かれたい)
③. 面白いことをして爪痕を残したい
④. Top8入りしたい
⑤. 優勝したい
例えば、Spyのような「明らかに目立つ面白デッキ」は、①③を目指すにあたりかなり適切なデッキであるといえます。
しかし、その不安定さから、④⑤を目指すならあまり適切ではないと考えられます。
別の例としては、仮に「ファミリアが他の全てのデッキに優位を取れる」「しかし、ファミリアミラーに自信がない」としたら、ファミリアという選択は④を目指すうえでそれなりに適切ですが、⑤を満たすうえではかなり怪しいでしょう。そんなに強いデッキなら、本戦でミラーになる可能性は高いからです。
しかし、例えば「神決定戦カバレージに名を残したい」「SNSプロフィールに書けるような実績が欲しい」場合は、「Top8入りすることが最優先目標」というのも一つの考え方だと思います。
目次に書いた「大方針」というのは、こういう話です。
今回の自分は、基本的には「⑤. 優勝したい」に100%寄せて考えることにしました。
これを目指すうえで、使用デッキに求める具体的な要件を考えました。
※なお、④でない理由の主なところは以下です。
・PauperMTGチャンネルにタイトルを持って帰りたい
・自分より圧倒的に上手い友人達(誰かはTop8入りすると思う)に、追いすがる考えではなく、瞬間的にでも追い越す考えで向き合いたい
まず、予選と本選が同日に行われる都合で、「予選(8試合前後を想定)を抜けたのち、本選3試合を全部制する」必要があることから、途中で疲れ切ってプレイミスを連発するようなデッキを使うわけにはいきませんでした。
「初の競技大会という緊張感の中、9試合前後の試合をこなしつつ、最後までプレイングの精度を落とさないデッキ」、つまり「疲れず回せるデッキ」もしくは「疲れていてもちゃんと回せるデッキ」である必要があります。
これを満たすための具体的な要素としては、
・単純に使い慣れていること
・やれることやれないことがハッキリしていて、少ない代わりに強いプランを持っていること
・初手ムラや引きムラにイライラしないこと(再現性が高い、もしくは単に愛着が強い)
このあたりが大事であると、自分は考えています。
・プレイヤーがOONSである(普段スパイクでない)
・競技レベルの大会である
・全勝に近い相手と当たり続けることになる
ということを踏まえると、「自分より上手い相手に何度も勝つ必要がある」も大前提とする必要があります。
となると、自分より上手い相手には、「選択の余地を増やせば増やすほど、試合が長引けば長引くほど、優位を取られてしまう」というのも重要なところです。
つまり、「速攻で決めるデッキ」、もしくは「その場のプレイ選択よりも構築(サイドボーディング含む)の占める比重が大きいデッキ」が今回の目標に向けて良いデッキであり、逆に「占術やコンバットトリックなど、いわゆる”その場のプレイ選択が光る”デッキ」は今回の目標に適さないと考えました。
先に書いた「最後までパフォーマンスを落とさず回せるデッキ」という話と少し近いですね。
また、ある段階を超えてからのプレイ選択は、そもそも絶対的な正解があるものではなく、じゃんけん的な噛み合わせのある駆け引きであり、損得勘定や推測から「Aというリスクを受け入れてBというリターンを取りに行く」という選択をする行為であることが多いと、自分は考えています。
その中で、お互いが取りうる選択肢を多く考えることができ、リスクとリターンの「確率の高さ」「バリューの高さ」から重み付けを正しく行い天秤を傾けることができるのが、いわゆる「上手い」プレイヤーなのだと思います。
で、その天秤を傾ける適切な判断をするためには、「相手は何を考えてその行動を取っているのか」というのが大事な判断要素になりますが、今回の大会の特殊性がその邪魔をします。
今回はPauper初の神決定戦として世間の注目を集めていることから、日常的にPauperをプレイしている人が中心となる普段のPauper大会とは異なり、他フォーマット層から「Pauper理解は浅いが根本的にMTGが上手い人達」「Pauper理解は浅いが記念参加したい人達」が数多く参加することとなります。半数以上を占めるでしょう。
もし仮に、自分の方がそれらの相手より多くの知識とノウハウを持っているとしても、そういう普段戦い慣れていない思考を持つ相手に対して「じゃんけんを噛み合わせる」ことができるか?というと、かなり怪しいところがあります。もしも自分の方が「いわゆる上手い考え方」をできたとしても、噛み合わせが悪く変な刺さり方をして負けるリスクは大いにあるということです。
これは回避しようと思って回避できるものではありませんが、先に挙げた「その場のプレイ選択よりも構築とサイドボーディングの占める比重が大きいデッキ」であれば、このリスク回避においても良いのではないかと思えました。
なぜなら、その場のプレイ選択以上に、構築をしっかり整えて各マッチアップのプランを事前に策定することの方が「択ゲー」になりづらく、これまでのPauper経験によるノウハウの利を裏目なく活かして差をつけやすいからです。
言い方を変えると、「自分より上手い人たち」「普段の相手と違う思考を持つ人たち」に対して駆け引きを繰り返すこと自体をリスクと捉え、「決めたプランを目指すにあたり、駆け引きの余地を多く挟まない」デッキを選んだということです。
択ゲーの話の延長として、プレイスキルや読みと関係の無いところで、単純に運による噛み合いの要素もあります。
例えば、以下のような話です。
・ボロスシンセサイザーでアドバンテージと盤面展開に優れる手札をキープしたが、相手がバーンで《熱錬金術師》を焼けず轢き殺された
・ボロスシンセサイザーで火力多めで生物1体だけの手札をキープしたが、簡単に更地統治者で制圧されてしまった
例示したのは初戦の話ですが、お互い激烈に刺さるカードを使えうる2戦目以降は、こういったリスクがさらに高まると言えます。
例えば、ボロスシンセサイザーでアーティファクト土地3枚の代わりに他4枚が強い初手をキープして、《塵は塵に》《ゴリラのシャーマン》で何もできなくなるとか、そんなんです。
これも基本的には避けようのない話ですが、①でぽろっと挙がった「再現性の高いデッキ」であれば、自分と相手のムラの噛み合わせではなく、相手のムラにどう対応するか?だけになるため、このあたりのリスクが多少軽減されます。
②③共通の話ですが、プレイ選択の噛み合いにせよ運の噛み合いにせよ、そういうのが起因してズルズル負けることは精神衛生的にもよくなく、最後までプレイの質を落とさず戦い続けることを阻害する要因となりえてしまいます。
自分にとって、今回の3要件を満たすデッキとして、黒単信心が内定しました。
最後まで、”情”を含めてマッドネスバーンも候補に残っていたのですが、以下の課題から棄却しました。
・親和が最近《勢団の取り引き》を盛りがち、かつ今大会はバーン系統を握る初心者が増えることを見越して更に増えそう(この傾向は他デッキでも同じことが見込まれる)
・③が怪しく、大事故こそ少ないがムラの噛み合い次第でプレイング関係無いイージールーズする
・プレイヤー的にもデッキ構造的にも、「《水流破》《紅蓮破》のやりとり」が不得手
また、黒単の除去がもろもろイニシアチブ生物に強く、かつ《汚涜》や《クォムバッジの魔女》+《チェイナーの布告》が《ケンクのアーティフィサー》に強く、そういった新規カードを使ったデッキに対して普段通りの動きでそのまま強く出られるというのも、黒単を後押しした理由の一つです。
最初に書いた通り、初の競技大会で初めて色々考えたことなので、無知や思慮不足が起因して辿り着いた結論かもしれません。
ですが、自分に可能な最善の選択を取ったつもりです。
次以降に書こうと思っているデッキリスト調整などを含め、「間違った考えだった…」とは今のところ思っていません。
②の延長として、相手の方が上手い前提だと、「お互いの情報量が多ければ多いほど相手に優位を取られてしまう」という話もあります。
これはデッキ選択そのものとはそこまで関係はありませんが、大会に向けた練習・調整に際し、自分の情報を誰にバラして誰に隠すか?という部分に影響して来ます。
上手い人に教えを乞うのは得られるものも基本的には多いのですが、上手いのなら神を目指す道中で当たる可能性も高く、情報が割れていることによるリスクも大きいということです。
※例外として、差がありすぎると身にならないという場合もあります。思考の深度と、言語化されていない感覚的なノウハウの違いから、話をちゃんと理解できない(最悪間違って理解する)という場合です。今回でいうと、上手い友人が別界隈で調整チームを組んでいたりはしましたが、そこに参加させてほしいと頼まなかった理由の一つがこれだったりします。そもそも思考のレベルが合うならチーム側から声が掛かるだろうし、調整チームってそうやってできていくものかなと。
話は少し前後しますが、「そもそもTierデッキとして何を想定していたか?」について。
ここはこの記事の本筋では無い+自分のメタ予想の話がそんな役に立つと思えない+フォーマット初の神決定戦という特殊な環境+MOリリース遅延によるメタゲームの混乱アリなので、結論だけ。
トップメタ(強い or ユーザ母数が多い)
・親和(ケンクいるかも)
・ファミリア(アーラコクラいるかも)
・モグワーツ
・ボロスラリー
・ボロスシンセサイザー
・青黒フェアリー(アーラコクラいるかも)
・マッドネスバーン
・エルフ
それなりにいそう
・サイクリングストーム
・野火続唱
・ランデス続唱
・赤単ブリッツ
・赤単バーン
・呪禁オーラ
・青単
・その他、イニシアチブが主役の何か
ちょっとだけいそう
・ジェスカイ(アーラコクラ、ケンクいるかも)
※ここの想定は神決の数日前に実際のメタの話聞いて変わりました。トップメタの一角。
・青赤フェアリー
・白単英雄的
・その他もろもろ(単に愛着あるデッキ握る人も多々いると思う)
・具体的なデッキリスト調整
・サイドボードプラン策定
・大会での結果など
これらは別で起こします。
もうお腹いっぱいでしょ!終わり終わり!