本記事は、PauperEDH動画撮影の際にPauperEDHに初めて触れたOONSが蓄積したノウハウと、魅力的に感じた他ジェネラルを紹介していく記事になります。
今後PauperEDHで遊ばれる方の参考になれば幸いです。
ざっくり言えば、公式フォーマットである「統率者戦」「Pauper」を混ぜたものになります。
Wizards公式から特にフォーマット定義や大会採用などが行われていない、いわゆる「非公式フォーマット」であり、一応MTGWikiに「コモン統率者戦」として書きかけ記事の掲載はされているものの、明確な公式情報は無いので界隈ごとにローカルルールが異なったりします。
※今回の記事でのルール定義は、次の章に記載します。
プレイヤーが少ない上にルールも統一されていないため、メタゲーム・先人の知恵・構築論などが無く、どのルールでどのデッキを組むにしてもすべてをゼロから考えていく必要があります。
競技的に詰めるスパイク的プレイヤーよりも、無人の荒野を自分で耕すことが好きなジョニー・ティミー的プレイヤーに向いたフォーマットであると言えますね。
本記事の前提として、自分たちがプレイした際のルールを記載します。
この後色々な話をしますが、”このルールである”という大前提での話になりますので、別のルールでプレイされる方はご注意ください。
・統率者戦のルールを基本として、以下の変更を加える。
①統率者はコモンかアンコモンの伝説のクリーチャーを指定する。
②統率者以外のカードは全てコモン限定(※Pauper準拠)とする。
③EDHの禁止カードに加え、Pauperの禁止カードも採用不可とする。
④初期ライフは30点、統率者ダメージは15点。
①については、MTGWikiなどでは伝説に限らずアンコモン以下を何でも採用可能とするルールになっています。
ただ、これは個人的な推測ですが、おそらくこのルールは大昔に「伝説に縛ると面白いジェネラルが少なすぎてつまらないから」できたものではないか?と考えています。
事実、数年前まではかなり選択肢が少なかったと思います。
現在は、ドミナリア・統率者レジェンズ・各種マスターズで面白いアンコモン伝説クリーチャーが大量に追加されており、伝説に限定しても十分楽しめたので、自分たちがやったように伝説に限定してジェネラル指定するのもアリじゃないかなと思っています。
どうせ非公式ですし、やりたいようにやりましょう。
多人数戦かつシングルトンになったPauper。
コモン構築になった統率者戦。
どちらとも言えますが、普段のPauperなり統率者戦なりとどう違うのか?という話をしていきます。
まず、「対戦相手が3人になることによる影響」について。
主に以下が挙げられます。
・アグロの弱体化
削らなくてはいけないライフ量が3人分になるため。これに加え、EDHでは初期ライフが20から増えるため、「素早く展開してとにかく殴り、早期決着を目指す」というアグロ戦術が取りにくくなっています。
よく「コンボはEDHの華」と言われたりもしますが、合計90点なり120点なりをカリカリ殴って削るよりも無限ダメージで全部削った方が早いことから言われている話です。
・ヘイト管理の重要性
1人で3人を倒すことが求められるアグロは難しいと書きましたが、逆に3人で1人を倒すことは簡単です。また、除去や打ち消しなどを打たれるリスクも、普段の3倍あるといえます。
そのため、露骨に全員に狙われかねないカードやコンボは、見せた途端に集中砲火で敗北するリスクも孕みます。
・妨害呪文の力関係の変化
例えば《喪心》なり《対抗呪文》なりを対戦相手Aに対して使用した場合、自分とAが1枚ずつカードを失うことにより、対戦相手BとCが相対的に得をすることになってしまいます。
逆に、《肉袋の匪賊》《黒死病》のように、全体に影響を及ぼす妨害は普段の3倍の効果があることになり、こちらは強化される形になります。
・テンポやマナ加速の重要性
前の話と似たような話になりますが、4人構築では目指すところが「相手3人に勝つ」であり、3人を相手に妨害やライフレースを仕掛けるよりも、自分自身が強い動きをする方が手段として手っ取り早いです。
そのためには、単純にマナカーブ通りに展開するだけでなく、「マナ加速により、マナのかかる強烈な動きを他人より先に行う」ことが最も効率的です。
※統率者戦プレイヤーの皆様はお気付きかと思いますが、もちろん例外はあります。
・追加ターン呪文の強化
3人分のターンをスキップできるので強いです。
ただ執筆現在、コモンやアンコモン伝説に追加ターン手段は無いので、詳細は割愛します。
次に、「シングルトンになることによる影響」について。
・サーチ手段の重要性が向上
100枚構築かつシングルトンであるため、基本的には普段の60枚構築と比べてデッキの動きが不安定になります。特にコンボを狙う場合、99枚中1枚のキーパーツに対して素引きを期待することは困難です。
そのため、この課題を払拭できるサーチカードの重要性が普段よりも向上します。
そして、「統率者の存在による影響」について。
・コンボやシナジーを活かしたデッキの安定化
単純な話ですが、統率者はいつでも唱えることができるため、統率者をパーツとして含むコンボは「常にパーツを1枚握っている」状態ということになり、動きが安定化します。
・マナフラッドが起きにくい
統率者が除去されるたび手札が実質1枚増えることになり、除去されなければそれはそれでやりたい放題できるので、マナフラッドでやることが無い…という事態に陥りにくいです。
安心してマナ加速しましょう。
最後に、「コモン構築になることによる影響」について。
・ゲームの低速化
シンプルにカードパワーが大きく落ち、コンボの選択肢も激減するため、普段の統率者戦と比べて各デッキのキルターンが遅くなります。ただ、リセット系呪文もほぼ無い環境のため、グダグダした長期戦というよりは普通にゲームスパンが伸びるだけという印象です。
そのため、最終的には全員ある程度盤面を展開することになり、コンバットの発生頻度や重要性が普段の統率者戦より向上するとも言えそうです。
・ジェネラルの重要性向上
ジェネラルはアンコモン、残りはコモンのみとなれば、ジェネラルは残り99枚よりもカードパワーが高いカードを採用できることになります。
そのため、構築やプレイングの中で、統率者をどれだけ活かせるか?の比重が普段の統率者戦よりも大きくなります。
・ファッティが弱い
重くて派手なカードは基本的にレアやアンコモンで刷られがちなため、マナ加速をした先のアクションが普段よりかなり弱いです。
そのため、他3人より先を行くためのマナ加速自体は必要であるものの、採用枚数などのバランス感は結構難しいところです。
・常在型のヘイト系置物が少ない
統率者戦でよく採用される、《締め付け》《倦怠の宝珠》《ガドック・ティーグ》のような常在型の妨害パーマネントがコモンにはかなり少ないです。
特に非クリーチャーだと《Mystic Remora》《リスティックの研究》《黒死病》くらいで、それ以外は使いきりの墓地対策カードなどがあるくらいなので、ここの3枚が痛くなければ「パーマネント除去が無いせいで詰む」という状況はあまりなかったりします。
構築面で重要な部分をピックアップすると、
・全体に影響するカード、サーチカードが強い
⇒コモンでは青と黒くらいしかこれにあたるカードが無いため、この2色が強い
・ファッティが弱い
⇒普段の統率者戦では強い緑のマナ加速デッキがあまり強くない
・アグロが弱い
⇒赤や白の強みが失われる
・ジェネラルの重要度が高い
⇒上記の色のパワーバランスを崩す要因になる
という感じで、大まかに言えば「青と黒が強いものの、強いジェネラルであれば誤魔化しが効く」環境であると言えそうです。
これらについては、動画を参照ください。
デッキリストや軽い紹介はこちら⇒ 動画当時の撮影録
《鉄面連合の略取者、ブリーチェス/Breeches, Brazen Plunderer》
《ラミレス・ディピエトロの幽霊/Ghost of Ramirez DePietro》
《鋭い目の航海士、マルコム/Malcolm, Keen-Eyed Navigator》
海賊の部族ビートダウン。《焦熱の連続砲撃》を強く使えるのが良い感じです。
また、PauperEDHは普段の統率者戦よりもコンバット重要度が上がることから、ブリーチェスで奪った適当なクリーチャーなんかが腐らず役に立ちやすそうなので、個人的にけっこう期待値高めで見ています。
相方としては、単体で強いラミレスとブリーチェスを活かしやすいマルコムで難しいところ。
マルコムだとブリーチェスを除去でさばかれ腐ってしまう危険があるので、ラミレスの方が安定しそうではあります。
《林間の茨、ミアーラ/Miara, Thorn of the Glade》
《ジョラーガの酋長、ヌーマ/Numa, Joraga Chieftain》
エルフの部族ビートダウン。《眼腐りの虐殺》を強く使えます。
他の全体除去は自分の被害も大きいためあまり積極的には使えませんが、ヌーマの能力で先に大きくしてから全体除去を打つような動きも楽しそうです。
それぞれ軽い割にエグめの能力を持っていて、攻めと守りを役割分担してそれぞれこなせるので、安定して戦えるのではないかと思います。
《ケッシグのレインジャー、ハラナ/Halana, Kessig Ranger》
シンプルにアドバンテージを取ってボードコントロールしやすいことに加えて、青や白と組み合わせればブリンクでインスタントタイミングの一方的格闘を行ったりでき、生物比重が大きいPauperEDH環境に向いたジェネラル性能だと思います。
《回収の接合者、イチ=テキク/Ich-Tekik, Salvage Splicer》
+1/+1カウンターの能力は必ずしもゴーレムトークンである必要はないので、ゴーレムの部族クリーチャーを含めてしまえばそれなりに対象はいます。あくまでそれなりにってだけなので、あまり強くはなさそうですが…
《予備物資》なり《胆液の水源》+サクり台なりで、アドバンテージを稼ぎながら強化して殴っていきたいところです。
《すべてを取り込むもの、スラーク/Slurrk, All-Ingesting》
+1/+1カウンター系のデッキと合わせることで結構な爆発力を得られそうです。
能力的には《回収の接合者、イチ=テキク》や《ジョラーガの酋長、ヌーマ》との噛み合いが良い感じですが、両方とも緑単なのでカードプールが狭まってしまうのが難しいところですね。
《空の管理者、カンジー/Kangee, Sky Warden》
《セラの大天使、レイディアント/Radiant, Serra Archangel》
《嵐の目、シアーニ/Siani, Eye of the Storm》
飛行ビートダウン勢。
面で殴るカンジーと点で殴るレイディアント(+シアーニ)、両方強いと思いますが、安定の面では除去耐性がありジェネラルダメージもそれなりに狙えるレイディアントが勝りそうですね。
《死の波のアラウミ/Araumi of the Dead Tide》
強い色に加え、けっこう派手な能力を持つジェネラル。
CIP能力が3回誘発することになるので、ぐいぐいアドバンテージを取っていけそうです。
《恭しき霊能者、サリズ/Thalisse, Reverent Medium》
全体除去で捌かれやすいサイズではあるものの、結構えげつない動きをします。
単純に1/1トークン生成呪文の生成数が時間差ありとはいえ2倍になるので、全体強化手段と組み合わせればいい速度が出そうです。
また、トークンはなんでもいいので、例えば宝物トークンや食物トークンでも誘発するのが構築欲をそそりますね。
ただ、全体強化手段はメインデッキで用意し引き込む必要があるのが玉に瑕ではあります。
《模範となる者、ダニサ・キャパシェン/Danitha Capashen, Paragon》
これ自体が強いことに加えて白のインスタントでこれを守ってオーラのアド損を避けやすいので、白単色とはいえ戦えると思います。
オーラのコスト軽減はキャパシェンを対象に取る必要はないので、拘引など妨害系のオーラも軽量化されるのが少し美味しいですね。
《炎の番人、ヴァルダーク/Valduk, Keeper of the Flame》
ダニサ・キャパシェンと似たデッキ構成になりそう。
赤単だと除去対策がほぼ無いことに加え、トークンも《黒死病》1枚で止まってしまう上に赤単なのでこれの対策手段もほぼありませんが、爆発力は高いので楽しさの面では勝りそうです。
《血の炎、ガルナ/Garna, the Bloodflame》
速攻付与に加えて、特殊なアドバンテージ要素を持つジェネラル。
色の都合でブリンクによるCIP再誘発は難しくなっていますが、《黒死病》からの復帰なり、《拷問生活》や切削・発掘などで落としたカードの回収なり、活躍の選択肢は広そうです。
《水底のドルイド、タトヨヴァ/Tatyova, Benthic Druid》
普通のEDHで知名度高めですね。だいぶ雑なアドバンテージ能力を持ちます。
《不屈の自然》や《成長のらせん》などの呪文がドロー能力を得ることになるので、毎ターン土地を伸ばしながら大量ドローできます。
ただしコモン構築の都合で、大量の土地と手札を得てもそこから勝つ手段がしょっぱく、意外と構築難度高いと思います。
《血の儀式司、ウィスパー/Whisper, Blood Liturgist》
起動型能力で何でもリアニメイトできる、アンコモンにあるまじき性能。
ただし黒単なのでこれ+αで無限ループコンボのようなものを決めることは難しく、単純に墓地にファッティなりコンボパーツなりを落として釣り上げるシステムクリーチャーとして使う形になりそうです。
【2021/08/22追記】
本章の一部カードについて、MTGWiki様では「アンコモン1」として表記されているものの、Pauperにおける正式な”コモン”の定義として参照するGatherer様においてレアとして扱われているようです。★マークをつけておきます。
⇒PauperEDH自体が先述の通り非公式ですので、身内で決めたらいいと思いますが、Pauperと同じ判断基準として考えるなら、「Gathererにてアンコモン以下のカードのみ使用可」とするのが良さそうです。
★《ニコル・ボーラス/Nicol Bolas》
殴りジェネラル。
高いスペック&えげつないハンデス能力に加えて、色が強いので黒の全体除去や青の打ち消しで守りを固めることができます。
★《暴虐の覇王アスマディ/Vaevictis Asmadi》
青色と妨害能力を失った代わりに、遂行速度が爆上がりしています。
緑があることで、マナ加速に加えてサイズアップや呪禁付与など点で殴る動きをサポートするカードを多々採用できるので、攻め気溢れる漢気ジェネラルビートダウンを目指すならかなり強そうです。
★《パラディア=モルス/Palladia-Mors》
自分でトランプルを持っているため、メインデッキにトランプル付与の枠を割く必要がないのが強み。
また、緑と白は両方とも呪禁付与なりプロテクション付与なりでジェネラルを守ることに長けており、相手の妨害をいなしながら殴ることができます。
ただし、青も黒もないため相手の動きを妨害する手段が限られることには注意が必要です。
★《クロミウム/Chromium》
ボーラスに単体スペックでは一歩劣りますが、同じく強力な青黒を含んでおり、(これは筆者の体感ですが)殴りジェネラルで青黒に合わせるなら赤より白の方が強いと思うので、色の面では最強な気がします。
★《黒き剣のダッコン/Dakkon Blackblade》
クロミウムと同じ色を持つ殴りジェネラル。
飛行がなくなりますが、長期戦ではサイズで勝ります。環境次第でこちらもあり。
★《魂の歌姫ルビニア/Rubinia Soulsinger》
他人のクリーチャーで戦うジェネラル。
この能力だけで勝つのは流石に難しいので、別に勝ち筋を用意した上で、ジェネラルは妨害やコントロールに利用することになります。
サクり台がある黒が欲しいところですが…そこまでわがままは言えないですね。十分強いと思います。
★《ジラ・エリアン/Xira Arien》
ドローエンジン。
ルビニア同様、別に勝ち手段を用意する必要はあります。
なんか無限コンボでLOとかもできそうな気がしますが、ちょっといい組み合わせを思いつかなかったので皆様にお任せします。
《帰ってきた刃の翼/Bladewing the Risen》
釣る対象が《多欲なドラゴン》や《ウギンの末裔》なあたりリアニメイト能力はただのアドバンテージ要素にしかなりませんが、全体パンプアップ能力があるので部族ビートダウンのロードジェネラルとして活躍できそうです。
イラストもかっこいいし、ドラゴンのロードというだけでもかっこいいので、人気がありそう。
《死蔵の世話人、死零/Shirei, Shizo’s Caretaker》
黒ずべらや《屍肉喰らい》などと相性良好。
例えば《屍肉喰らい》《泥棒ネズミ》が並べば、ターンが1周する間に4回もパンプアップ&全員ディスカードを仕掛けられます。
CIPハンデス以外にも、《危険なマイア》《ボトルのノーム》《Soldevi Adnate》《死の信者》《思考抜きの魔女》…などなど、相性の良いカードは案外多くあります。
《曲がりくねりのロシーン/Rosheen Meanderer》
X呪文やX能力が一気に強烈になります。
ただ、《とどろく雷鳴》《キヅタの精霊》《スライム成形》などのシンプルなX火力とXクリーチャーしかおらず、現段階のカードプールでは厳しげですね。
…今後に期待しましょう。
《素拳の岩守/Iwamori of the Open Fist》
PauperEDHならデメリット無し!
それが言いたかっただけです。おわり。
《厳格な者、コンラッド卿/Syr Konrad, the Grim》
かなり緩い条件で全体ダメージを飛ばすことができ強力なジェネラル。
例えば、《拷問生活》を1回起動するだけで2点、発掘や脱出でもお手軽大ダメージ。また《大祖始の遺産》などとも噛み合い良好。
それらが無くとも、条件がガバガバなおかげで、これを置きながらフェアデッキとして戦うだけでもかなりライフレースで優位に立ちやすいと思います。
《勇敢な騎士、カラ卿/Syr Carah, the Bold》
雑にアドバンテージを取れるジェネラル。
効果がけっこう強力なものの、ジェネラル指定と考えると赤単というデメリットを乗り越えてこれを使うほど強力なインスタント・ソーサリーに恵まれていないのが現状。今後に期待しましょう。
《太っ腹、グラングリー/Grumgully, the Generous》
これと頑強クリーチャーで無限頑強が成立。
コモン構築の都合で選択肢は少ないですが、それでも《高層のアウフ》で飛行クリーチャーの人権をなくしたり、サクり台の能力を無限に誘発させたり、《アシュノッドの供犠台》で無限マナしたり、多少は遊べます。
おわり。