Gavin Verhey氏による、Pauper Format Panelによる声明動画の日本語訳を掲載致します。
Gavin氏了承のもとPauperMTGにて翻訳いたしました。
Good morning Magic!
私はウィザーズ・オブ・ザ・コーストのガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyです。
マジックのカードをデザインするだけでなく、私はPauper Format Panel(Pauperというフォーマットを維持するためのグループ)のメンバーであることも覚えているかもしれませんね。
今回は、このフォーマットの現状や私たちの考え、今後起こりうる禁止事項など、最新情報をお伝えしたいと思います。
準備はいいですか?さあ、はじめましょう!
Pauper Format Panelが1年前の今月結成され、2022年はどんな1年だったのでしょうか?
あれからフォーマットは大きく変わりました。
まず、トロンと親和を対象としたいくつかの大きな禁止改訂で幕を開け、《エイトグ》《予言のプリズム》《眷者の装飾品》を禁止にしました。
これらは、トロンがこのフォーマットを永遠に支配し続けることと、親和の爆発的なフィニッシュを弱めることを目的としていました。
その結果、「親和」に対する新たな打撃として《大霊堂の信奉者》を、そして爆発的なストームデッキを抑制するために《電位式リレー》を禁止しました。
また、《探検の地図》の禁止を解除し、トロンから一度は落とした地図を道具として戻しました。
最後に、この年の後半に『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』が発売されました。
イニシアチブ・デッキの大爆発に対して行動を起こす必要があり、《アーラコクラの隠密》、《奮起するバード》、《アンダーダークの探検家》、《物騒なバトルレイジャー》を禁止しました。
さて、その結果はどうだったでしょう?
トロンの禁止はかなりうまくいっていて、今ではこのデッキはかなり満足のいく場所にあります。
《探検の地図》がこのデッキに戻ったことで、特に『兄弟戦争』で《エネルギー屈折体》が追加されてからは、(以前より少し効率が落ちたとはいえ)かなりの成功を収めています。
イニシアチブの禁止も同様に、「ターボ・イニシアチブ」の存在をあらゆる場所で遮断し、うまく機能しているように見えます。
一方で、一部のミッドレンジ・デッキではまだ、よりフェアにプレイされているのを見かけます。
これは多かれ少なかれ、私たちがイニシアチブに対して期待していたことであり、とてもうまくいったと思います。
《電位式リレー》の禁止は、そのストームデッキを問題から締め出すのにかなり明確に貢献しました。
より議論を呼んでいるのは「親和」です。
2つの大きな禁止が出た後でも、このデッキはこのフォーマットで最高のデッキの1つとして健在です。
これはPFPで最も活発な議論の1つで、親和の週ごとの成績について、そしてもっとやるべきことがあるのかについて、話し合っています。これについては後ほど。
しかし、それは私たちの栄誉に安住する理由にはなりません。
というのも、ここまでが私たちの活動を振り返る良い機会ですが、変化がないときでも私たちは1年を通して常に何が起きているのかを話しているからです。
注目すべき新しいデッキや、実現しなかった禁止事項の議論、リーグ分析などなど。
それでは、現在の状況についていくつかお話ししましょう。
このフォーマットを数字で見たり、データを分析したりすると、その要点は以下のようになります。
明らかにフォーマットの上位に位置するデッキが4つあります。
グリクシス親和、赤単、ディミーア・テラー、そしてカウ・ゲートです。
2022年は、Pauperに大きな影響を与えた年でした。
禁止されたものに加え、《僧院の速槍》のコモン収録と《実験合成機》の追加により赤単戦略が大幅に強化され、《トレイリアの恐怖》により「ディミーアテラー」という全く新しいアーキタイプが誕生し、《バジリスク門》により《戦隊の鷹》《聖なる猫》でのキルが可能になったのです。
この3つが、上位4つのデッキの中に入っています。
さて、もうひとつの興味深い点は、「4デッキフォーマット」とはほど遠いということです。
この4つのデッキがチャレンジ(Magic Online)におけるフィールドシェアのおよそ60%を占めている一方で、残りの(およそ)40%にはボーグル、フェアリー、ナヤゲート、オルゾフエフェメレイト、トロン、壁コンボ、その他多くのデッキが散在しているのです。
そして、これらのデッキは実際に成功を収めており、Magic Onlineのチャレンジでトップ8に入ったり、定期的に優勝したりしています。
さらに、マッチアップデータを見ると、実はメタゲームはかなりバランスが取れています。
親和と赤が他の4大デッキより少し高い割合になっていますが、必ずしも問題があるレベルではありません。
エターナル・フォーマットの健全性に関して言えば、上位に4つのデッキがあり、その下に多くの成功したデッキがあるというのは、かなり良いことだと思います。
より多様である場合もありますが、より多様でない場合もあり、Pauperの歴史の中では頻繁にそうでした。
禁止改訂を出すと、この繊細なバランスが損なわれ、フォーマットが本当に変わってしまうかもしれません。
なので数字で見ると、かなりまともな状況になっているように見えます。
ここで禁止事項を作っていないのには、かなり正当な理由があるのです。
しかし、ここで考慮すべきなのは数字だけではありません。
プレイヤーの体験について考える場合、数字の見え方だけでなく、もっとたくさんのことが関係してきます。
大きなものは、「繰り返し」と「新鮮さ」の2つです。
「繰り返し」について、つまり同じデッキと対戦しているように感じる頻度ですが、特に親和と赤のプレイ速度では、よく対戦しているように感じられます。
それらはゲームが速く、少ない経験でプレイに飛び込むことができる戦略なので、同様に多く現れることになります。
そして、多くのプレイヤーがバーンデッキのようなものに負けることを嫌います。
相手が良いドローをすれば、それに勝つために戦略を並べるのは難しいように感じます。
別の言い方をすれば、そのPauperマッチで主体性を失ってしまうように感じるのです。
そして「新鮮さ」、フォーマットの陳腐化という点では、「親和」は昨年の「モダンホライゾン2」のブリッジランド以来、トップ・デッキの1つであり、それ以前もプレイできる良いデッキでした。
バーンも同様で、フォーマット開始当初から存在し、ほぼ常にプレイ可能なデッキです。
どちらのデッキも、たまに見かける分には問題ありませんが、突出したレベルになるとかなりフラストレーションが溜まるのです。
もう一つの側面として、前後関係もあります。
この1年で、この概要だけでもわかるように Pauperは大きく変わりました!
禁止に加えて、多くのセットで新しいアーキタイプを追加したり、フォーマットを変更したりするカードが登場しました。
そして今、私たちは数ヶ月間フォーマットが大きく変化することなく、物事が落ち着いてきているため、より停滞しているように感じられます。
エターナル・フォーマットにとって、常に変化しているわけではないことは予想されることですが、特にこの1年で成長したこのフォーマットに参加した人や、この急激な変化のスピードに慣れてしまった人にとっては、違和感があるのではないでしょうか。
揺さぶりをかけるために禁止改訂を行う価値はあるのでしょうか?
これは人によって考えが違うものです。コメント欄であなたの考えをお聞かせください。
通例として、私はフォーマットを揺さぶるためだけに禁止をしないことに賛成です。
なぜなら、それは滑りやすい道であり、結果的に禁止を増やすことになるからです。
しかし、今回は特殊な状況であり、親和やバーンに対して楽しくプレイできない人がいるという議論は現実的なものです。
最終的に、他の何よりも、私たちの目標はプレイヤーにとって楽しいフォーマットにすることです。
そして、これらのデッキが与えるものよりも奪うものの方が多いのであれば、何かを変える必要があります。
そこで、私たちが議論してきたことを説明します。
まず、「親和」から何を禁止するかということです。
親和はナンバーワンのデッキで、そう、バーンよりも成功しているデッキであり、すでに禁止を受けているデッキでもあります。
もし私たちが大きな動きをして、本当にデッキに打撃を与えたいのであれば、アーティファクト・ランドを禁止することができます。
これは10枚のブリッジランドか、5枚のアーティファクト・ランドのどちらかになるでしょう。
どちらにも長所と短所があります。それぞれが他のものに損害を与えます。
例えば、ブリッジランドは(今はほとんど見なくなってしまいましたが)《浄化の野火》のようなカードを使った他の楽しい方法でプレイされてきました。
一方、アンタップのアーティファクト・ランドはシナジーのために他の無数のデッキで使われてきました。
最大の差は、このデッキをどれだけ《ゴリラのシャーマン》に弱くしたいかということです。
破壊不能のブリッジランドはこのカードからうまく保護してくれますが、ミラディンのアーティファクト・ランドはこの戦略にとって完全に鉄槌となるのです。
もしこのサイクルのどちらかを禁止したら、デッキに大きなダメージを与え、フォーマット全体の構造を変えてしまう可能性があります。
それは良い方向に向かうかもしれませんし、悪い方向に向かうかもしれません。
もちろん、《エイトグ》や《大霊堂の信奉者》のようなカードをデッキに戻すことは検討しますが、禁止解除を行うにはこの変化の影響を見るまで待つことになるでしょう。
もう一つの方法は、より選択的な禁止を行うことです。
しかし、デッキに冗長性があるため、どのカードを禁止にすべきかが不明瞭という問題もあります。
クリーチャーデッキに弱くするために《クラーク族のシャーマン》を禁止するのか?
大きな脅威を阻止するために《マイアの処罰者》?
《感電破》でバーンポテンシャルを止める?
カードドローと多色化を弱めるために《命取りの論争》?
これらのカードの多くは交換可能で、このデッキは豊富な選択肢を持っています。
もしあなたが禁止してほしい土地以外のカードが1枚か2枚あれば、コメントで教えてください。
バーンにおいては、親和に禁止を出す場合、どうすべきか難しいところです。
バーンがトップデッキで最高のアグロデッキである場合、そのためのカードをサイドボードに入れやすくなるからです。
しかし、親和に加えてバーンからも同時にカードを禁止するとしたら、《僧院の速槍》(デッキを『ダブルマスターズ2022』以前の状態にリセットするのに役立つ)か、複数のデッキにわたってフォーマットのオールスターになっている《実験統合機》になるかもしれません。
しかし《僧院の速槍》は愛されているカードであり、《実験統合機》は他のデッキへの影響も大きくなります。
バーン呪文を禁止することは、冗長性があるため、危険な道です。
マジックの歴史上、1マナや2マナの強力なバーン呪文が非常に多く(今後増えるものを含めて)、有望な道とは言えません。
また、この2つのデッキの間にいくつかの通底性があることも注目に値します。
例えば、《感電破》と《大焼炉》は両方のデッキがプレイするカードです。
これらは小さめの打撃ですが、もしオリジナルのアーティファクト・ランドや《感電破》を禁止したら、どちらのデッキも衰退してしまうということは知っておくべきでしょう。
それ以上のことは、これがどうなるかを見るまで、追加で行動を起こすことはないと思います。
これらの要素を変更することは、フォーマット全体の一部をひっくり返す可能性があります。
そして、他の2つのトップ・デッキ、「カウ・ゲート」と「ディミーア・テラー」がトップになるだけかもしれませんが、メタゲームはそれよりも複雑なものなのです。
例えば、コントロール・デッキを食い物にすることが多いトロンは、大きな復活を遂げるかもしれません。
最後にもうひとつ、禁止の解除についてです。
私たちは最近、禁止リストから外れるものがあるかどうかということについて少し話しています。
禁止リストにあるカードの多くはコンボ・デッキのためにあるもので、私たちはそれらを変更するつもりはありません。
しかし、最近話し合ったカードが2枚あります。
《陥没孔》と《トーラックへの賛歌》です。
これらは実際にフォーマットに存在しなかったという点で興味深いカードです。
2019年にフォーマットの禁止リストが統一され、紙とMagic Onlineのプールを統一したとき、これらのカードは禁止されました。そして、以前はオンラインで使用可能ではなかったのです。
つまり、世界はこのどちらかを持つフォーマットを知らないのです。
さらに、黒単は常に人気のあるアーキタイプであり、これらはそれらのデッキにツールを与えることになります。
しかし、両カードの欠点は、どちらも対戦をあまり楽しめないということです。
2マナの土地破壊は、特にトロンのようなデッキにとって非常に厄介で、《トーラックへの賛歌》は2ターン目に土地を含む重要なカードを2枚落とすだけで、非常に多くのゲームにならない状況を作り出してしまいます。
2ターン目に唱えることで、多くのゲームにならない状況を作り出しています。
最終的には、どちらも面白さだけで戻ってくることはないと思いますし、これらのカードがあることでフォーマットがより正味で楽しいものになるとは、個人的には想像しにくいです。
しかし、コメントで考えを聞けるのは嬉しいことです。
さて、はっきりさせておきたいのは、これらの禁止や禁止解除の変更について、今日私たちが行うことでは無いということです。
これらは、私たちが話し合ってきたことに過ぎません。
私たちの考えは変わるかもしれませんし、まったく別の道を歩むこともありえます。
私たちPFPは、私たちがこの種の話題について考え、話していることを皆さんにお知らせすることが重要だと考えています。
また、大規模かもしれない何かしらの行動を起こす可能性があることを、皆さんにお知らせするものでもあります。
今のところ、アクションを起こすとしたら『ファイレクシア:完全なる統一』の結果を見てからにしようと思っています。
2月上旬にリリースされる『ファイレクシア:完全なる統一』の結果を見るまでは、何か行動を起こすつもりはありません。
今月末にMagic Online Pauper Super Qualifierがありますが、私たちはこのイベントの結果を見たいと思うのと同時に、それ以前にプレイヤーのためにフォーマットを根本的に再定義することは避けたいと思っています。
PFPを代表して、私たちがPauperについて考えていることの、ありのままを楽しんでいただければ幸いです。あなたのご意見を下のコメント欄でお聞かせください。
次回まで、あなたが正しいマッチアップに直面しますように。
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翻訳文は以上です。
ご意見等はGavin氏 Youtube動画のコメント等へお願い致します。