統率者レジェンズ コモンレビュー

  • 2020.11.13
    カード紹介
    OONS

    ■はじめに

    OONSです。

     

     

    こちらの動画、見られましたでしょうか。楽しそうだなぁ…

    自分は今回プライベートの都合で不参加という形になってしまいましたので、こちらにコラムという形で思いの丈を出力していこうと思います。

     

    今回の収録ですが、大まかに「統治者」「続唱」「その他」という形で大まかに括れますね。
    その流れに従いつつ、ある程度厳選しながら各カードを紹介していきます。

     

    ■統治者

    ・《失墜/Fall from Favor》
    3マナという軽さで、”環境を大きく揺るがすのでは”と注目されています。

     

    軽さの陰に隠れていますが、「飛行クリーチャーに手を出せる」というのも唯一無二です。
    青黒や青赤のフェアリー系デッキが《コーの空漁師》あたりを寝かせながら統治者を奪えると思うと強烈ですね。
    それに伴い、ボロスとの統治者の奪い合いや青統治者ミラーに備えて、最近見ない《潮流のマントル》なんかも採用されてくるようになるのではないでしょうか。

     

    それ以外で言うと、ノンクリーチャー寄りな青軸のコントロールデッキへの採用もありそうですね。
    もちろんマウント保持の意味でもそうですが、殴ることをしないデッキが相手の統治者を対策する手段としての意味合いも持てます。具体的には青黒コンやターボフォグなど。
    また、オーラであることや、置き直しのコストが他の統治者より軽いことなど考えると、現実の酸デッキでの採用も面白そうです。

     

    ファミリアやジェスカイブリンクは、現行で《宮殿の歩哨》が使われていないという部分でなんとなく察せられます。
    「そんなことするよりもっと確実にアドを取る手段がある」というところでしょう。

     

    なお、強いとはいえ粗もあり、《対抗呪文》など普通の打ち消し呪文以外で対応されてしまう懸念もあります。
    具体的には以下です。
    ・生贄による対象不適正(元々《屍肉喰らい》などを採用しているデッキに注意)
    ・除去呪文による対象不適正(結果的にアドは取れますね)
    ・赤霊破/紅蓮破(打ち消しですが、普通の打ち消しとは別枠として…)

     

    そのため、例えば統治者に依存した「○○統治者」のようなデッキを組む場合はクリーチャー統治者に枠を譲りつつ、あくまでデッキの1パーツとして統治者を採用する場合に採用されるような形になるのではと考えています。

     

    ・《蒼穹艦隊の提督/Azure Fleet Admiral》

    限定的なアンブロッカブル能力を持った統治者。
    その能力により、除去されなければ無限に統治者を奪えます。
    《失墜》の方に注目を奪われがちですが、これも十分強いです。

     

    また、しれっと普通に3/3で悪くないサイズをしています。
    アドバンデージの確保手段でありつつ、しっかり自分でゲームを決める力があるのが強いですね。
    …ただ、逆にそれが青っぽくなくて、個人的には少し気に入らなかったりもします。

     

    ・《真紅艦隊の准将/Crimson Fleet Commodore》

    赤らしいサイズ感の4マナ統治者。
    トランプル付きのパワー5で、統治者の無理矢理な奪還を狙いやすいのが赤らしくていい感じです。

     

    また、赤なので先にライフを削ってから統治者を取ることで「殴ってしまうと返しで死ぬ」状況に追い込みやすいのも良いですね。
    そういう目的でアグロへの採用は視野に入ると思います。(現行アグロの土地基盤では4マナの捻出が厳しいので、要調整ではありますが…)

     

    ・《堅牢な玉座守り/Staunch Throneguard》

    無色であることに加え、「《ギルドパクトの守護者》を止められる」「黒死病や火力で死ににくい」としてペスト耐性が注目されました。

     

    そもそも《ギルドパクトの守護者》より重いため、止められること自体は本来おかしなことではないのですが…”《ギルドパクトの守護者》への回答を展開しつつ統治者を取れる”となれば話は別ですね。
    ただ、《削剥》で処理されてしまった場合のテンポ損が気になるのと、面白いけど「具体的にメジャーどころの何で採用されるのか?」と言われると自分はあまり出てこないです。

     

    Pauperにおいて無色といえばトロンですが、そもそもただの無色ではなくタッチカラーを得意とするPauperトロンが《宮殿の歩哨》などをあまり使っていないことを考えると怪しい気がします。
    《眷者の装飾品》などの方がより確実だから…という部分もありつつ、「一般的には3マナ程度かかる1枚分のアドバンテージを毎ターンエンド時に得られる」という統治者のテンポ面の魅力がビッグマナデッキのトロンにとっては魅力的でないという部分もあると思います。

     

    ただ、逆に現行で時々いる《宮殿の歩哨》ありのトロンは、このカードに乗り換えてもおかしくないかなとは思います。《削剥》で割られるリスクも、そもそも相手からするとマスト除去な《眷者の装飾品》とどちらが割られるかという話でしかないですしね。

     

    ■続唱

    ・《自然の再生/Natural Reclamation》
    ・《苛立つアルティサウルス/Annoyed Altisaur》
    ・《力強い否定/Forceful Denial》
    ・《乗り込み部隊/Boarding Party》
    ・《大渦の巨人/Maelstrom Colossus》

     

    全体的に重い…
    普通のフェアで《血編み髪のエルフ》のように雑なアドバンテージを取れるカードとして入れるには、少々重すぎますね。
    入れるとしたらランプ系ですが、それはそれで続唱でマナ加速を捲って泣く未来が見えます。
    もし使うなら…《渦まく知識》のようなトップ操作を仕込んだランプ、というのが最も適しているように思います。弱そう。

     

    ■その他カード個別評価 白

    ・《慈善の祝福/Benevolent Blessing》

    白単英雄的で使われる《チョー=マノの祝福》によく似たカード。
    《夜明けのキマイラ》を使うような珍しいデッキでもない限り、上位互換ですね。
    シングルシンボルになったことで、多色デッキでの採用もしやすくなりました。
    考えられるとすれば、赤白の英雄的デッキか、緑白系のビートダウンデッキのサポートでしょうか。

     

    ・《キンズベイルの急使/Kinsbaile Courier》

    白のCIP生物はブリンクや《コーの空漁師》により使い回しが効きやすく、かつ恒常的なサイズ修正は《コーの空漁師》対決を制することができるため、ボロス統治者デッキとの噛み合いは良さそうです。
    …ただ、噛み合いだけは良いものの、いまいちカードパワー自体が足りていない感が強いですね。終わり!

     

    ■その他カード個別評価 青

    ・《想起横溢/Flood of Recollection》

    個人的にコントロールデッキへの知見が足りないところがあるのですが、終盤専用で事故の元な割にアドも取れないのでコントロール的には微妙な気がしています。
    ただ、青が濃いめのコンボデッキにおいては「同じ呪文を実質5枚以上積む」ことをプラス2マナで実現できるようになったので、何かいい感じのロマンデッキが出てきたらいいなと思います。

     

    ・《スカーブの大巨人/Skaab Goliath》

    レビューする程のカードではないですね。縫い合わせのドレイクを見習って欲しい。
    でもフレーバーとイラストすごい好きなので置いときます。

     

    ■その他カード個別評価 黒

    ・《肉袋の匪賊/Fleshbag Marauder》

    個人的には一番待ち侘びていたカード。
    《紆余曲折》《暴走の先導》で拾える布告、《コーの空漁師》《儚い存在》で再利用できる布告、《発掘》で使える布告、一枚で二回《葬儀甲虫》を誘発させる布告、タッパーなどで寝かされた生物を活かしてアドバンテージを取れる布告。構築次第でこのあたり色々なシナジーが期待できます。
    しれっとマナ相応のパワーがあるのも良いですね。

     

    ・《眼腐りの虐殺/Eyeblight Massacre》

    《エヴィンカーの正義》が、《虹色の断片》《黒曜石の見習い僧》で軽減されず、《リバー・ボア》などに再生されなくなった代わりに、エルフに効かなくなってしまいました。
    エルフデッキ以外でも、緑単の《クウィリーオン・レインジャー》《イラクサの歩哨》《シラナの岩礁渡り》、呪禁オーラの《林間隠れの斥候》《シラナの岩礁渡り》、感染の《ぎらつかせのエルフ》など、対象外になってしまうクリーチャーはなんだかんだけっこういます。
    ボロスラリー耐性の高さだけは評価できるので、「緑系のデッキは他で対処できる!ボロスラリーはきつい!」というデッキがあればそこに入るかも程度でしょうか。

     

    ・《眼腐りの剪定者/Eyeblight Cullers》

    4マナ域の《金切るときの声》が概ね「4マナから1/1飛行が4体」もしくは「捨てた場合は0マナで1/1飛行が2体」であることを考えると、サイズで勝っているとはいえ少しパワー不足を感じますね。
    とはいえ比較対象である《金切るときの声》のカードパワーが高すぎるだけですし、そもそも色も違うので個人的には試してみたい気持ちもあるのですが…特に活かせる現実的な道が思いつかない、というのが正直なところです。

     

    ■その他カード個別評価 赤

     

    ・《間に合わせの砲弾/Makeshift Munitions》
    《蛮行オーク》といい《死の夜番のランパード》といい、最近こういう系多いですね。
    エンチャントなのでそれらと比べて対処されにくい所、クリーチャーも狙える所が強みです。

     

    パッと浮かぶところとしては、ボロス統治者に1枚差して、余ったファクト土地やプリズムを投げたり、除去に対応して使ったりするのがいい感じじゃないかと思います。もしくは、これを複数枚採用して《胆液の水源》《カルドーサの再誕》ギミックを組み込む昔の型にしてもいいかもしれないですね。

    また、サクリファイス系のデッキに差してみても、これまで少なかった相手への干渉手段として強烈なのではないでしょうか。

     

    なお親和への採用については、これ自身がアーティファクトでも身でもでないため事故要因になるところに加え、サイドからの置物対策の一部が一緒に刺さってしまうので、リスクがメリットよりも勝ってしまいそうで、自分としては無いなと考えています。

     

    ・《炎のチャンピオン/Champion of the Flame》

    英雄的…とは違いますが、単体強化と噛み合う攻め気強めのクリーチャー。
    パワーだけでなくタフネスも上がるのが、ブロッカーで止まりにくくて良いですね。
    タフネス上昇以外の除去耐性はないのでそこを補助できる赤白か、除去された時のアド損を回避しやすい赤緑あたりが候補でしょうか。前者の方が強いと思います。

     

    ・《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》

    1マナ重くなった代わりにインスタントになった《紅蓮地獄》。モダンの《神々の憤怒》を思い出させる存在感です。
    地味に黒単アグロの《欲深い悪漢》や《変わり身ののけ者》などが生き残りますが、構築段階で気にする程のことではないでしょう。

    元々《電謀》が刺さるデッキ(フェアリーやエルフなど)に加え、ストンピィ・黒単・RDWなどタフネス2でそれを回避してきたデッキ群にシングルシンボルで圧をかけることができるようになりました。また、《電謀》と異なり焼ける範囲が広いため、メインから1〜2枚入れても完全に腐ることはあまり無いと思います。

     

    あまり他で語られているのを見ませんが、上にちょっと書いた黒単へのダメージもかなり強くあるのかなと思っています。
    元々黒単というのが「3マナ2/2生物を中心に+1のアドバンテージをテンポ良く取っていく」デッキなのですが、3マナのこのカードで並べた2/2を更地にされてしまうとその大前提が崩壊してしまうためです。《クォムバッジの魔女》なんかも起動しづらくなりますね。

     

    …このカード単体で言えることはこんなものでしょうか。シンプルなので大して語ることないですね。
    このカードの追加による環境どうこうの話は最後にまとめようと思います。

     

    ■その他カード個別評価 緑

    ・《造命師の贈り物/Lifecrafter’s Gift》
    増殖デッキ専用みたいなカードですね。

     

    増殖デッキの全体強化枠には以前の記事でも挙げた明確な比較対象がいる(→記事)ので、そことの競合になります。

    基本的には「《瀬戸際の勇気》がシンプルに強い、《造命師の贈り物》の方が小回りは効く」という感じになります。

     

    この”小回り”についてもう少し具体化すると、
    ①コンバットトリックや除去の回避:相手のブロック指定や除去呪文を見てから打つことで、《巨大化》系呪文と同じ後出しじゃんけんができます。
    ②増殖の種としてのカウンター設置:《花粉光のドルイド》のCIPにスタックして《造命師の贈り物》を《花粉光のドルイド》にキャストすることで、《花粉光のドルイド》のカウンターも増殖することができます。
    という形になりますね。

     

    ただ軽さに加えて、《ブラストダーム》の消散カウンターの増殖の可否や、4マナ件の渋滞などの都合もあり、自分なら《瀬戸際の勇気》を選ぶと思います。

     

    ■その他カード個別評価 無色

    ・《イロアスの武器庫/Armory of Iroas》
    3回目の攻撃で《ヴァルショクの鉄球》を超える…ものの、殴らなくてはいけないのと、環境的に《削剥》などがメインから平然と飛んでくることもあり、ちょっと厳しい気がします。
    ただ増殖との噛み合いが良いため、個人的には緑単増殖で少し遊んでみたい気持ちもありますね。

     

    ・《鋳造所の検査官/Foundry Inspector》
    アーティファクト系コンボデッキの追加パッチ。《エーテリウムの彫刻家》の5〜8枚目です。

     

    まず筆頭に上がるのはマイアコンボでしょうか。
    シンプルに《エーテリウムの彫刻家》が8枚体制になって強いのと、青を含まないタイプの構築という選択肢も追加された形になります。

     

    また、過去のデッキですが、このデッキのようにキャントリファクトをぶんぶん回して《大霊堂の信奉者》や《ゴーレムの鋳造所》でわーってやるデッキも、大きく強化された形になるのではと思います。《鋳造所の検査官》がしっかり鋳造所で働くのはなんだかフレーバー的にも良いですね。

     

    別方向の話として、そもそも3マナ3点クロックなので、ただのオールインコンボではなく「なんかマナ軽減もしてくれる”身”」としてこれを採用するアーティファクト系のビートダウンが出て来ないかな?と個人的に期待しています。普通に悪くないパンチ力を持ちつつ後続のマナ軽減を行えて、焦熱の連続砲撃で絶命するとはいえ普通に強いような気がします。他環境でもそういう使われ方してますしね。
    ただ、既存のよくある親和デッキにはあまり噛み合わないと思うので、オリジナルなデッキ構築は必要になりそうです。

     

    ・《金線の使い魔/Filigree Familiar》
    ミニ《真面目な身代わり》として地味に有名なカード。

     

    死亡時効果まで達すれば《ファイレクシアの憤怒鬼》越え。
    ただ、即効性と確実性に欠けるのと、ついでに忍術で戻した時のバリューが低めなのもちょっと引っ掛かりますね。

     

    ライフゲイン+アドバンテージの観点で《ムラーサの胎動》と比較しても、どうにもパッとしない感が強いです。
    ただ、過去に《ボトルのノーム》なんかも採用実績があったりすることを考えると、それの上位互換に近い「アドを取れるライフゲイン枠」としてサイドで試されたりはするかもしれません。

     

    ・《ジェイラム秘本/Jalum Tome》
    基本的には、ドローのコストが軽いとはいえ《眷者の装飾品》に劣ってしまうと思います。
    捨てることがデメリットになる限りそこは超えられないと思うので、その意味で唯一可能性があるのはマッドネス系デッキ…なのですが、それはそれで既存の強力なディスカード要素達が強烈なライバルとして立ちはだかりますね。「インスタントタイミングでドローとディスカードができる」のは《信仰無き物あさり》にも《野生の雑種犬》にも無い特徴なので、その長所を活かしやすい構成なら1枚差し替えてみてもいいように思います。

     

    ・《憑依の外套/Haunted Cloak》
    《闊歩するものの装具》が、サイズ修正をできなくなった代わりに警戒とトランプルを得た形。
    ライフレース特化な感じでやることはわかりやすいし、カードパワーもそれなりだと思うんですが、かといって特に入るデッキが浮かばないです。
    わざわざ構築段階から3+1マナもかかる装備品による速攻付与を検討するような丁度いいファッティはPauperには居ません。

     

    ■今後の予想

     

    《失墜》《焦熱の連続砲撃》、次点で《蒼穹艦隊の提督》あたりが環境影響大きそうですね。

     

    ・《焦熱の連続砲撃》による3すくみの崩壊

    Pauper環境は大まかに言えば「トロン⇒フェア(ミッドレンジorコントロール)⇒アグロ⇒トロン…」という3すくみによって成立していますが、この《焦熱の連続砲撃》によりフェアがアグロにさらに勝ちやすくなることに加え、トロンがアグロに対して不利という大前提が多少崩れます。

    《焦熱の連続砲撃》から逃れられる一部を除いたアグロデッキは環境から淘汰され、そうなるとフェアに有利なトロンが環境をより支配する方向に動くのではないでしょうか。

     

    ・青系デッキの統治者参入

    各種青系デッキに入ってきそうです。
    3~4マナであるため隙が生まれてしまうのは事実ですが、逆に「相手に統治者を置かれてしまった後の返し」にもなるので、その隙に見合う価値はあると思います。
    これにより飛行クリーチャーによる統治者の奪い合いが大前提になるマッチアップが増えそうなので、前述した《潮流のマントル》の採用が増えるのではと考えています。

     

    ・一部アクションの速度定義の変化
    「統治者」「(限定的すぎない)全体除去」のタイミングが4マナから3マナに変わった形になります。
    この2つはどちらにせよゲームを決定付けうるアクションであり、
    「青いデッキなら打ち消しを間に合わせないと負けに直結しうる」
    「アグロデッキならケアするか殺し切る速度を目指すかを構築段階で考える必要がある」
    そういうラインだと思います。
    押し付ける側にせよ受ける側にせよ、この変化によって各デッキにおけるカードの採用基準やプレイングの判断基準がゴソッと変わることになるでしょう。

     

    ■おわりに

    トップメタからジョニーのおもちゃまで、割と広い範囲のデッキに追加パッチ提供があるパックでした。
    これが公式的に意図的なのかどうかまではわかりませんが、もしかしたらPauper環境が公式化している以上は、Pauperの盛り上げや環境への刺激を加味してのカードデザインだったりするかもしれないですね。

     

    けっこう激しめの影響なので、これからの環境がどう動くのかによっては禁止改訂に繋がる可能性もありますが、まずは新しいカードと環境の変化を楽しんでいければと思っています。

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