OONSです。統率者レジェンズに引き続き、カルドハイムのコモンレビューを書いていきます。
今回は、スケジュールの都合もつきコモンレビュー動画撮影への参加ができましたので、動画で語り切れなかった部分の補完としてのコラムになります。
まずは、コモン全体をざっくり見たうえでの感想から。
・カードパワー高いけどPauper環境に合わない、もしくは環境上位に入るデッキが無い
・環境上位に噛み合うデッキはあるけど競合を押しのけて入るほど強いかは難しい
というカードが多いかなという印象です。
ただ、これは言い換えると、
・環境下位のデッキが強化される、もしくは新デッキが発生する可能性がある
・環境上位のデッキも選択肢が増えるが、強さは大きく変わらないから下位デッキを引き離さない
とも言えて、環境の多様性を向上させうる内容なんじゃないかなと思います。
そういう点で、今回のカルドハイムは個人的に「こうあって欲しい」収録内容でした。
・予顕
Pauperは、ゲームエンドが遅いので勘違いされがちですが、テンポ自体はかなり重要です。
その点、自分のターンに2マナ寝かせて何もしないことは結構リスキーで、かつ裏向き追放とはいえコモン限定のカードプール的に何を予顕しているか簡単に特定されてしまうことが多いと思うので、そこのデメリットは重く見る必要があります。
なので、「予顕前提で強いカード」というよりは、「素唱えでも強くて、予顕という選択肢を持てるカード」が理想的かなと思います。
動画で紹介している《多元宇宙の警告》などはまさにその例ではないでしょうか。
・誇示
地味に複雑ですが、「攻撃指定後はそのターン中いつでも、(攻撃がプレイヤーに通らずとも)1回だけ起動できる能力」です。
チャンプアタック上等の前のめりなアグロデッキ、もしくは安全に攻撃する体制をしっかり準備できるデッキで輝く能力ですね。
フレーバー的な話ですが、攻撃したくらいで自慢してるの想像するとちょっと可愛いですよね。《恐れなき仔》なんか特に、フレーバーテキストが多分誇示してる時の鳴き声なんだろうなぁと思います。
・機体
新規メカニズムではないですが、コモンにもそれなりの機体が追加されました。
他のクリーチャーをタップする必要があり、かつ機体だけ残っても何もできないため、メカニズム自体にアド損の要素があります。そのため、機体自体のスペックなり構築なりでその点をどうカバーするかが重要になります。そのあたり装備品に近いです。
これも、昔からですが犬やら鳥やら牛やらが機体に乗ってるのを想像すると楽しいですね。
今回収録の《巨大雄牛》が《アラダラ急行》に搭乗できると話題ですが、運転席に納まらないでしょうし、押すなり引くなりして急行列車を動かすんでしょうか。
・氷雪
賛否両論ありつつの再録ですね。
個人的には、氷雪メカニズムそのものはフレーバーやイラストが好きなので肯定派ですが、基本土地イラストもMTG文化の1つだと思っているので、その文化を楽しむことが妥協構築になってしまうという理由から、氷雪というより氷雪基本土地に対して否定派でした。
ですが今回、レア枠ですが氷雪土地を戒める《傑士の神、レーデイン》が収録され、氷雪ではない基本土地を採用するそれなりの理由が生まれたので、文化的な面でも否定する理由が減ったかなと思っています。
…が、自分はPauper民なので、Pauperで使える範囲でのテコ入れも欲しかったのはもちろん本音です。
《失墜》禁止の件でも「Pauperを気にせずデザインしている(禁止改訂で調整する前提)」なのか「調整ミス」なのかが曖昧でしたが、今回のカルドハイムで氷雪メタがコモンに無かったことを考えると、前者が濃厚になったのかなと考えています。
以下のカード群は、特に注目すべきカードとして動画で紹介しています。
本記事と違い、OONSよりも対戦経験豊富な二人の意見を含めて聞ける動画になりますので、そちらを見ていただいた方がいいかなってことで本記事では割愛します。
(白)《戦場の猛禽/Battlefield Raptor》
(白)《シュタルンハイムの駿馬/Starnheim Courser》
(青)《多元宇宙の警告/Behold the Multiverse》
(青)《怪物縛り/Bind the Monster》
(黒)《薄暮振るい/Duskwielder》
(黒)《ドローガーの再生/Raise the Draugr》
(赤)《恐れなき仔/Fearless Pup》
(赤)《領界路の開放/Open the Omenpaths》
(緑)《氷皮のトロール/Icehide Troll》
(緑)《仮面の蛮人/Masked Vandal》
(無)《略奪者のカルフ/Raiders’ Karve》
(無)各種氷雪二色土地
それでは、上記以外で気になるカードや話題のカードの紹介です。
《掟綴りの僧侶/Codespell Cleric》
実質1/2/2警戒、《戦場の猛禽》に次ぐ白単ウィニーの追加パーツです。
1/2/2としてそれなりに殴った後に《コーの空漁師》による使い回しで《コーの空漁師》自身を3/4にできる上ブレがありつつ、展開し切った後に引いてしまうと弱い下ブレもあり、評価がしづらいタイプのクリーチャーですが、十分戦えるスペックだと思います。
アドバンテージには繋がらず、かつ1~2マナ域を多く採用しないと輝かない能力なので、白単ウィニーの中でも特に前のめりに寄せたデッキで採用を考えてみたいです。
《巨大雄牛/Giant Ox》
《アラダラ急行》に乗れる、デメリットのない2マナ域。丑年ですね。
機体を除去されるとただの延命ブロッカーに成り下がるので、現状のコモン機体のスペックから考えるとTier1の戦いにはついていけないロマン特化なカードと言えます。
《アラダラ急行》に乗れる2マナ域という意味では、4/1防衛の《松明の壁》なんかが立ち位置近いのですが、除去耐性やブロッカー性能の違い、装備品握って殴れるかどうかの違いがポイントです。
マナコストが軽く搭乗コストが重い機体が出るたびに再評価すべきカードだと思うので、強い機体が刷られるたび頭には置いておきましょう。
個人的にはどこかのタイミングで《領事府の弩級艦》のコモン落ちを期待しています。
《確固たる戦乙女/Stalwart Valkyrie》
2マナデルバーとして少し話題になりました。
見た目がすごく強そうな割に使われていない《縫い合わせのドレイク》を彷彿とさせますが、マナコストとタフネス以外に「墓地が無くても素唱えできる」のも違いと言えます。
ただ、《コーの空漁師》を踏み潰せない時点で「このカードを2ターン目に唱えるためだけにデッキを歪める」ほど強いサイズとは言えず、結局のところ安く唱えられることがあるフレンチバニラでしかないので、ボロスラリーか何かで1~2枚試されて少ししたら消える程度じゃないかな…と思っています。
《鴉変化/Ravenform》
青の確定追放除去。
青単では重さに加えて1/1飛行を与えてしまうことが結構痛く、コントロールや2色のフェアリーなら青以外の色から除去が打てるので、なんやかんや使われる場はあまり無さそうに思います。
青黒ではアーティファクトに触れないのでアーティファクト対策としてこれを採用する魅力はありますが、デメリット付きの3マナソーサリーをわざわざ採用するくらいなら、《無効》で頑張るなり他のタッチカラーを模索するなりした方が手っ取り早いように思えてしまいます。
《拷問者の兜/Tormentor’s Helm》
赤くなり地味に面倒な効果を得た《レオニンの円月刀》。
この手の地味なサイズ修正値の装備品はメタゲームによって価値が大きく変わるので評価しづらいですが、軽量アタッカーがチャンプアタック上等でダメージを飛ばせるようになるのは大きいと思います。
《炎のチャンピオン》を使うデッキや赤系のアグロ、また同型を制するためのボロス統治者での採用などが考えられます。
また、例えば感染や、《泥棒カワウソ》系のカードなど、プレイヤーにダメージを与えることが何かをもたらすクリーチャーとの組み合わせも面白そうですね。
《タスケーリの火歩き/Tuskeri Firewalker》
衝動的ドロー持ちのクリーチャー。
本体が少々重いので、4ターン目に3/2で雑に殴れるかというと結構怪しいところです。
マナ加速から無理矢理早出しするデッキを組むには《暗黒の儀式》を使える《大胆な盗人》の方がやりやすいので、これを使うなら赤の軽量除去で無理矢理攻撃を通す感じになるでしょうか。
とはいえ、《大胆な盗人》と違ってパワーが3あればただのチャンプアタックになることは少なく、攻撃宣言さえすれば誇示能力は使えるので、何かしらのブロッカーと1:1交換でもしながら1枚リソース補給できると考えれば、特化した構築ではなく中速のビートダウンで雑に差してみても意外と悪くないかもしれません。
俺は傑士だ!っていうフレーバーが、《確固たる戦乙女》のフレーバーを見た後だとちょっと面白いです。
果たして、傑士と認めて通してくれるんでしょうか。
《玄室荒らし/Vault Robber》
墓地にクリーチャーがあれば1マナで毎ターン宝物を増やせる能力持ち。サイズもそんなに悪くありません。
宝物トークン単体ではアドバンデージにならないので、《間に合わせの砲弾》《蛮行オーク》なり《エイトグ》なり、アーティファクトカウント稼ぎと噛み合いの良いパーツを合わせて活用するのがいいでしょう。
《ヤスペラの歩哨/Jaspera Sentinel》
《壌土のドライアド》の上位互換。
《サルーリの世話人》と比較してもほぼ上位互換…と言いたいところですが、Pauper的には防衛をむしろメリット能力として使う壁コンボがあるので、全然そんなことありません。
マイナーアーキタイプですが、《壌土のドライアド》などで《石ころ川の群れ長》を捻って遊ぶトークンデッキがあるので、そのデッキ的には地味強化ということになりそうです。
《サルーフの群友/Sarulf’s Packmate》
雑なハイスペック生物。《ラノワールの幻想家》が思い出されます。
Pauperのビートダウンデッキにおいて3/3のサイズはタフネス3ブロッカーを乗り越えられる優秀なサイズなので、そのサイズにドローがついてきたとなれば強力です。
そもそもPauperには3~5マナ域で殴って攻めるようなミッドレンジビートダウンが存在しないので既存の上位デッキに活躍の場はありませんが、今回の《氷皮のトロール》なんかと合わせてそういうアーキタイプを考えるのも楽しそうです。
《蛇皮のヴェール/Snakeskin Veil》
《レインジャーの悪知恵》系統のカード。
サイズ修正がそのターン限りではなくカウンターになったので、どちらかというと《巨森の蔦》と《吠え群れの飢え》を足して2で割ったようなカードと言った方がいいかもしれません。
ただ、現行の緑単における《巨森の蔦》や《吠え群れの飢え》を押しのけるほどの強さがあるかというと無いので、なんだかんだ使われないくらいのカードと思われます。
《葬送の長艇/Funeral Longboat》
《サルーフの群友》と同じ、攻めるに丁度いいサイズ感。
マナクリーチャーやシステムクリーチャー、また《夜市の見張り》などを寝かせて気軽に殴れます。マナレシオ的にも悪くないので、攻め気の強いデッキでブロッカーを前に呆けているパワー1を有効活用する手段として採用できそうです。
その意味では、黒単アグロに採用されることがあった《改革派の貨物車》が同じ採用目的で比較対象になるかもしれません。
黒単アグロにおいて言えば搭乗2を達成しやすいことから《改革派の貨物車》の方が強い気がするので、緑系のファイアーズ的なデッキでマナクリーチャーを寝かせる運用で考えてみたいです。
■白単ウィニー
シンプルに、《掟綴りの僧侶》《戦場の猛禽》を見てモチベが上がりました。
以前に構築した白単兵士デッキなんかは「ウィニー寄りのフェアデッキ」でしたが、そこからグイッとアグロに寄せた感じの前のめりなもので遊んでみたいです。
■マナクリ入り緑ビートダウン
以前にモダンで使っていたデッキに、
・《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》から3~4マナ域の強烈なアグロクリーチャーを展開
・暇になった《ラノワールのエルフ》は《密輸人の回転翼機》で有効活用
というコンセプトの緑単ストンピィがありました。
・《密輸人の回転翼機》の代わりに《葬送の長艇》
・パワー不足だった3~4マナ域に《サルーフの群友》《氷皮のトロール》
という感じで置換しつつ、近いコンセプトのデッキが組めないか考えています。
■緑白アグロ
雑な思いつきレベルですが、《戦場の猛禽》はパワーを+2できると一気にバリューが跳ね上がるところがあるので、《骨断ちの矛槍》だけでなく《怨恨》とか足したらもっと楽しいかな?という発想です。
多色化によるテンポ損、《怨恨》スタック除去によるアド損、そのあたり課題は多々あるので時間があるときにでもゆっくり考えます。
■青単
《怪物縛り》が追加されたことで、単純に「強くなる」のはもちろんそうですが、テンポデッキとして取るべき動きがはっきりして気持ちよさそうなので、握りたくなりました。