晴れ横レッツ5パウパー参加録 – 灰色商人との対話 –

  • 2020.12.2
    その他
    OONS

    OONSです。

     

    今回は特にPauperMTGとしての活動に関係のない、晴れる屋横浜店様で開催されたレッツ5パウパーの参加録と、そこに持ち込んだデッキの構築録になります。

     

    先に結果だけ書いてしまうとBYE含め3-2でなんとも微妙な戦績だったので、実益的な記事というより読み物感覚で読んでいただければ幸いです。

     

    ■構築の始まり

    筆者がこれまでPauperで遊ぶ中で、なんだかんだ最も回数を擦ってきたのは黒単というアーキタイプです。
    細かく言えば、その中でも自分が使ったのは「《墓所のネズミ》コントロール」「《堕落》コントロール」「黒単統治者」という3アーキタイプに分かれるのですが、その全てに構築上の共通項がありました。

     

    それは、”《アスフォデルの灰色商人》がいないこと”です。

     

    このクリーチャーがあまり黒単の強みと噛み合っていないような気がして、先の3デッキにも入れず、そもそも黒単信心というアーキタイプ自体あまり信頼せず組みませんでした。

    2〜3マナで手軽かつ能動的にアドバンテージを取ったり、優秀な単体/全体除去で盤面を制圧したり、そこに統治者でマウントを取ったり、そういった部分が黒単の強みだと思っていて、灰色商人はそのどちらにも寄与しない、いわゆる不純物であると考えていたためです。

    また、黒単を使ったり使われたりした際にライフレース勝負ではなくアドバンテージ勝負での決着が殆どだったことに加え、それ以外の面で灰色商人に苦しめられたこともなく、そういった実体験の積み重ねもこの意識を確立させてきました。

     

    …しかし、実際に大会で勝っているリストでは灰色商人入りの信心型が多く、紙Pauperに多い黒単愛好家の方々も皆灰色商人を使っていることもあり、「灰色商人が弱い」のではなく、「灰色商人の強さを理解する力が自分には無い」というのが実際のところ。というのも、理解していました。

     

    そもそも物事の理解と言語化を好む自分としては、この状況に危機感を覚え、「机上でのプロファイリングではなく、直接対話してみよう」という考えに至ります。要するに「使ってみてその強さを理解する」という方針です。
    とはいえ、いわゆる黒単信心の構築に納得がいっていないのも事実。となれば、灰色商人を納得いく形で投入できる自分専用機の構築が必要です。

     

    つまりこの記事は、構築録&大会参加録でありつつ、筆者と灰色商人の”対話録”になります。

     

    ■構築

    活かすにはどうすべきか。

    黒のパーマネントを多めに採用するのは当然として、ただの黒単信心だと自分の中でどうしても腹落ちしない以上、何かしらのプラスアルファが必要です。

     

    そこで、CIPの再利用手段を用意することで、「半端にライフ吸ってく奴」ではなく、「吸い倒して勝ちに繋げられる奴」になることを目指しました。つまり、除去コントロールのドレイン要素ではなく、明確な勝ち手段の一つとしての採用を目指します。

    また、そもそも黒単信心はCIP持ち生物に強力な《騒がしいネズミ》と《ファイレクシアの憤怒鬼》がおり、それらとも噛み合わせられるため美しくデッキを纏めることができそうです。

     

    具体的な再利用手段としては、《コーの空漁師》・忍術・ブリンク呪文との組み合わせが考えられました。

    しかし、《コーの空漁師》や忍術は5マナの灰色商人と組み合わせると「唱え直しのコストが重い」という課題があり、また黒単自体の「生物が逐一重いため軽量除去でテンポを奪われやすい」という課題をブリンク呪文なら解決しやすいため、ブリンク呪文の中でも最も軽い《儚い存在》を相方に据えることに決めました。

     

    ■集合知の壁

    ここで壁に突き当たります。

     

    Pauperにおいて、各種手段でCIPを再利用するという戦術はあまりに常識的であり、となれば3マナ域CIP生物の強さに定評のある黒単と《儚い存在》を合わせるアイデアは誰でも思いつくはず。しかし、自分の経験の限り、そのデッキを見たことはありませんでした。

    3マナ域と組み合わせるなら《熟考漂い》を想起ブリンクした方が良いからでは?という考えもあるとは思いますが、能動的な《儚い存在》に頼ったそのアクションは隙を大きく作ってしまうリスクが大きい側面があり、また《騒がしいネズミ》や《アスフォデルの灰色商人》を強く採用できるか否かという部分も小さくない違いもあり、どちらが良いかはさておき上位互換や下位互換の関係には無いと考えます。

    であれば、誰でも思いつくこのコンセプトを誰もやらない理由は「何かしらの理由で弱いから」以外には考えられません。

     

    しかし、元々今回の文脈は「皆がやる事を理解するための対話」であり、考えすぎずに対話の中で確かめていこう。と決意を固めました。

     

    ■統率者レジェンズの追加

    今回のデッキは特に今大会に向けたものではなく、そもそも統率者レジェンズのプレビュー前に75枚完成していました。

    そのため、以下のカードから想定外の煽りを受けることになります。

     

    ・《失墜/Fall from Favor》:

    従来の黒単だとだいぶ厳しいこのカード。これを《儚い存在》で避けられるのは明確なメリットです。この《儚い存在》に対応して除去を合わされても、結果的に《失墜》も外れることになるので損が無いですね。また、相手は既に青3マナを使っていることから、仮に《儚い存在》を打ち消されたとしても次の自分のターンを相手の青マナがほぼ無い状態で迎えられる見込みが大きいのも良い感じです。

    ただし、副次的な話として、これの追加に伴いフェアリーデッキ自体が増えてくる(《呪文づまりのスプライト》が《儚い存在》に刺さる)ことを想定し、《クォムバッジの魔女》は3〜4枚積みたいところです。

     

    ・《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》:

    「《ファイレクシアの憤怒鬼》《騒がしいネズミ》のおかげで、テンポ良く盤面展開とアドバンテージ確保を両立できる」という黒単の強みによって得た盤面が、このカードで潰されてしまう危険性があります。ただ、《ホネツツキ》を採用しない型であれば、そこまで極端な大損害を被る訳ではないので、悩みはしつつも構築次第でどうにかなる範囲かなと思いました。

     

    …という感じで、環境的な立ち位置は良くなった部分も悪くなった部分もありつつ、「少なくとも、諦めるほど悪くなってはいない」と判断し、少しだけ調整して大会に持ち込むことにしました。

     

    ■最終リスト

    ・メインボード

     

    3:《クォムバッジの魔女/Cuombajj Witches》
    4:《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
    4:《騒がしいネズミ/Chittering Rats》
    1:《墓所のネズミ/Crypt Rats》
    2:《黒薔薇の棘/Thorn of the Black Rose》
    4:《アスフォデルの灰色商人/Gray Merchant of Asphodel》

     

    4:《儚い存在/Ephemerate》
    1:《発掘/Unearth》
    2:《夜の囁き/Night’s Whisper》
    2:《血の署名/Sign in Blood》
    4:《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》
    2:《喪心/Cast Down》
    2:《酷評/Castigate》
    2:《土牢/Oubliette》

     

    4:《磨かれたやせ地/Scoured Barrens》
    4:《灰のやせ地/Ash Barrens》
    11:《沼/Swamp》
    2:《ボジューカの沼/Bojuka Bog》
    2:《平地/Plains》

     

    ・サイドボード

     

    3:《孤独な宣教師/Lone Missionary》
    1:《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》
    1:《ギルドパクトの守護者/Guardian of the Guildpact》
    2:《ファリカの献杯/Pharika’s Libation》
    2:《強迫/Duress》
    2:《押し寄せる砂/Choking Sands》
    2:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
    2:《黒死病/Pestilence》

     

    ・採用しなかった候補

     

    《薄暮軍団の盲信者/Dusk Legion Zealot》
    《催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend》
    《石角の高官/Stonehorn Dignitary》
    《顔なしの解体者/Faceless Butcher》
    《嘆きウェルク/Mournwhelk》
    《運命のちらつき/Flicker of Fate》
    《死の重み/Dead Weight》
    《処刑人の薬包/Executioner’s Capsule》
    《損ない/Unmake》
    《息詰まる噴煙/Suffocating Fumes》
    《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》

     

    最終的にこんな感じに落ち着きました。

    全カード理由はありますが、文字数もそれなりに増えてきたのでメインボードの各採用枚数をピックアップして紹介します。

     

    土地は少し多めの23。普通の黒単と比べて、できれば儚い存在を構えるために1マナ浮かせて動きたいと考え、気持ち多めです。具体的には、以下のように選定しました。

    ・土地2キープから《クォムバッジの魔女》と白いカードを両立できる確率を上げるため、ゲインランドを4枚投入
    ・展開して来ない相手の最序盤に手札が溢れやすいことに加え、《儚い存在》のための白1マナを構えるために使い辛いため、バウンスランドは不採用
    ・昨今のランデス流行に備え、平地は2枚

     

    《儚い存在》と各種CIP生物は、コンセプトでありつつシンプルに強いため基本4。例外的に《黒薔薇の棘》だけは相手次第であまり引きたくないものの、いざ相手が統治者を唱えた時に取り返しやすいよう2枚採用しました。

    ※《儚い存在》の反復によりクリーチャーが召喚酔いするため、殴って統治者を奪う動きを若干し辛いのが背景にあります。

     

    《夜の囁き》と《血の署名》は、「コストの払いやすさ」「フィニッシュ手段として相手に撃てる魅力」との天秤になりますが、一人回しの結論としてデッキを潤滑に回すギリギリのラインが2:2だと判断しました。

     

    《酷評》の採用は、普通に強いハンデス枠でもありますが、《呪文づまりのスプライト》を含めた打ち消しや除去をケアして《儚い存在》をより確実に活かす意図もあります。

     

    能動的な押し付けアクションの手数を増やすため、《発掘》を試験的に1枚採用しています。

     

    ■大会結果

    後日書いてるので、微妙に記憶が前後してたりするかもしれません。

     

    ・1戦目 BYE

    暇でした。

     

    ・2戦目 vs青黒コン 0-2

    1戦目:身の少ないデッキ相手に大量の除去を腐らせてしまい、土地が詰まったこともあり能動的なアクションがかなり遅れて負け。ただ、灰色商人連打で削りきれそうなギリギリまで持ち込むことはでき、彼の力はしっかり感じました。

    2戦目:土地0!土地0!ダブマリ!何も引かん!負け!

     

    ・3戦目 vs赤緑上陸 2-0

    2戦とも、除去で捌き切って適度に並べたところから灰色商人+《儚い存在》の大量ドレインで勝ち。

    アグロ耐性は少し不安だったのですが、こういう点で殴るタイプのアグロであれば除去が追いつき対処が間に合いそうです。

     

    ・4戦目 vs白黒ペスト 1-2

    ペストのライフゲイン+全体ダメージと、灰色商人+《儚い存在》ドレインのライフレース対決。お互いに除去は盛り盛りなので、盤面的にはさっぱりした状態になりがちな戦いでした。

    感覚としては、多少相性有利に感じたものの、こちらが土地止まって動きが遅れた部分やハンデスを的確に刺された部分もあり、結果的に押し切られ負け。こういうライフ勝負だと《清純のタリスマン》もかなり厳しかったです。

     

    ・5戦目 vs赤緑続唱 2-0

    基本的には赤緑上陸と同様の試合展開。

    酷評で手札を見たら《乗り込み部隊》×2と《苛立つアルティサウルス》×2で漏らしましたが、チャンプブロックで稼いで除去を間に合わせ、どうにかなりました。今回の試合では、相手の続唱ファッティが概ね《彼方地のエルフ》だったことも大きいです。運が良かった。

    点で殴るデッキにはやはり強いですね。

     

    ・(フリプ) vs優勝したUR失墜 0-2

    初戦は3T《失墜》からテンポ良く統治者マウントを取り切られ負け。

    2戦目は展開を焦るあまりフルタップでターンを返してしまい、《儚い存在》を構えられなかったことが原因で捲られ負け。青相手に焦りがちな自覚は元々あるんですが、治りきらない…

    ちなみに2試合とも、後手2Tの《ボーラスの占い師》に対して、《深き刻の忍者》を恐れてフルタップで3マナクリーチャーを出すか?《失墜》を恐れてクリーチャーを出さないか?が難しい選択でした。2戦目は除去があったのでそれを選べたのですが、除去が無い場合にどうすべきかは考えを固めておきたいところです。

     

    ・環境

    フェアリー系のデッキが4人?5人?と比較的多く、その次に黒単が2人(自分のを黒単と数えれば3人)、他は有名なものからカジュアルまで色々なデッキがいました。

    最近話題のデッキで言うと、続唱特化なデッキが2人、また鋳造所の検査官を入れたマイアコンボが1人いて、後者は割と勝っていたようです。

    また、デッキ分布とは関係ないですが、Pauper初心者の方もある程度いて、フォーマットとして人が参入してきているのを感じました。

     

    ■学び

    マナスク起因で負けた試合が多いことから土地の増量も考えたいところですが、既に23枚でドローソースもそれなりなので、試行回数の問題な気がしています。

    もう少し様子を見て、何度やっても厳しそうならサイクリング土地を絡めて土地を増やすか、バウンスランドをどうにか調整して入れ込むことも考えるつもりです。

     

    また、《眷者の装飾品》について、今回の構築では3マナ域過多になる気がして入れていませんでした。しかし、3マナ生物はできれば4マナから唱えたいところ、4ターン目に灰色商人を出せる体制によってバーン耐性が上がるところも考えると、入れるのが正解だったと今は思います。土地枚数と一緒に、ここも調整していきたいところです。

     

    置物関連では、サイドボードに置いていた《黒死病》をメインに移してもいいかな?とも思ってます。

    「除去されないダブルシンボルの置物」という存在自体が灰色商人と噛み合い魅力的であることに加え、灰色商人のドレインと合わせて白黒ペスト同様の全体ダメージによる決着を狙うことができるためです。ただ、こちらは割と怪しいところではあります。重いし。

     

    また、マナベース調整で事情は変わるかもしれないのですが、1マナインスタントの除去が少し欲しいと思う場面が多かったのも気になっています。ゲインランドを置けている時、儚い存在を構える際の浮いた1マナを能動的なアクションに使えると動きの幅が増えることに加え、《呪文づまりのスプライト》へのケアをしきれない場面が多かったのが理由です。

    沼純度はさほど高くないですが、《見栄え損ない》で潰せるクリーチャーが最近少ないため、終盤にも腐らない《汚涜》あたりが良いかな?と曖昧に考えています。それか、浮きマナの暇潰しはサイクリング土地に任せて、《殺し》あたりを入れるのもアリですね。

     

    ■対話の結論

    いや〜やはり強い。物心つく前から信じてました!

     

    生物が重く盤面展開が遅い黒単のゲーム速度をカバーできることに加え、盤面・統治者・ハンドアドなどの間接的なプランとは別軸で「ライフを削り切る」直接的なゲームエンドを目指すプランを具体的な数字ありきで組み立てやすくなり、具体的な目標を持って能動的に勝ちに行けるのが良い感じでした。

    灰色商人の強みと灰色商人以外の強みが噛み合っていない問題そのものはそのままですが、これはそもそも問題ではなく、むしろ別軸だからこそ強いのだなと理解した次第です。

     

    また、この速度感は「その勝負に勝つため」という意味でも良いことですが、紙の大会においては引き分けを避けたり次試合までの余裕を作ったりできるのもそれなりに価値のあることだと感じています。ダメージではないので軽減などの変な妨害を受けにくく、青以外には精神的に落ち着いてプレイしやすいのも良い感じです。

     

    という感じで、灰色商人と全力で肩を組みつつ、このあたりでこの記事を締めたいと思います。

    高い頻度でPauper大会を開いてくださる晴れる屋横浜店様、大会で当たった皆様、ありがとうございました。

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