活用の難易度が高いカードについて掘り下げていくPauperMTG企画、パウパーラボ。
研究員のOONSです。
前回の特集はこちら。
《オークの木こり》
今回は2本目です。
《黒薔薇の棘》、強いですよね。
毎ターンドローできる破格の紋章効果に、小さめとはいえクリーチャーもついてくる。デッキのメインエンジンになりうる、コモンにあるまじき強烈な性能を持ったカードです。
では、それが1マナ軽く無色になり、パワーも1上がり、自分のターンだけでなく相手のターンにもドローできるようになったとしたら?
はい。丸っこくて愛らしいですね。
彼の悲嘆の声を止め、強く生きてもらうために、今回はこのカードの可能性を探っていきます。
戦闘に介入するたび、”お互いに”1枚引くという効果。
相手も引いてしまうとはいえ、本体が多少戦えるサイズをしていることを踏まえれば、アド損を伴うようなカードではありません。
ただ、あくまで「損はしていない」という話でしかなく、3/2/3というサイズも「弱くはない」程度なので、他の無難にお得な3マナ域と比べて活躍していないのが現実です。
また、《ジェスの盗人》《大胆な盗人》という、攻めるだけなら似た条件で自分だけアドバンテージを稼げるカードがあるというのも、このカードにとっては向かい風と言えるでしょう。
それらのカードすら使われていないと考えれば尚更で、このカードを使うならブロック時誘発を活用するのはマストと言えそうです。
このカードを他と差別化して活用するには、以下2つの軸で考える必要がありそうです。
今回の記事は、このそれぞれに対してアイデアを考えていきます。
・誘発効果で自分だけ得をするには?
・誘発回数を稼ぐには?
どれだけカードを引いたところで、マナがある分しかカードは使えません。
そのため、マナ加速や土地破壊などの手段で1ターンに使えるマナに差をつけることで、増えた手札をどれだけの速度で吐けるか?の勝負で優位に立つことができます。
土地破壊の側から見ると、せっかく土地破壊したのにお互いドローで次の土地を引かせてしまう…ように見えるかもしれませんが、このコンセプトでの土地破壊は「相手の土地を0枚にして投了させる」ことではなく「マナ差をつける」こと。
1ターンに1枚しか土地は置けないので、毎ターン土地を引かれたとしても、こちらも同様に引き続ける土地を置いていればマナ差は埋まりません。
もっとシンプルに、普通に回すだけでテンポ勝ちしやすいアグロデッキやテンポデッキで使う…ということも考えられます。
ただし、それらのデッキの標準レベルから見ると3/2/3の生物はテンポロスになってしまい、根本的にデッキの一貫性を崩す要素になりうることは認識しておきましょう。そのデメリットを超える価値を持てるようにする必要があります。
マナ差の話が「引いたカードを吐き出しきれない」状況を作るアプローチだとすれば、こちらは「引いたカードを吐き出したくない」「吐き出しても意味がない」状況を作るアプローチです。
例えばこういう全体除去。
自分がこれらの被害を被らない形を作れていれば、相手にだけ「唱え損」なカードが多くある状況を狙えます。
タフネス3というサイズも、ここでは役に立ちますね。
もしくはターボフォグ。
ターボフォグ軸のデッキに組み込んで、フォグを打つついでにブロックに回せば、ダメージ軽減で生き残りながら自分のドロー+相手のライブラリ削減を進めることができます。
ダメージを通す必要がなく、戦闘参加さえすればよいという彼の強みを美しく活かす形になります。
ただし、メイン採用してしまうと相手の腐った除去がモリモリに飛んで来ること請け合いなので、サイドボーディングで除去を減らしてもらって以降にサイドインして使うのがよいかもしれません。
戦闘機会を強制的に増やす手段といえば、一つはやはりこれでしょう!
膠着すれば統治者(イニシアチブ)マウント、殴って来たら《吠えたけるゴーレム》をブロックに回して誘発(さらに返しのアタックでも誘発)という八方塞がりな状況を作り出すことができます。
なお飛行持ちはブロックできないので、この方針にするなら何かしらのケアは考えておいた方がよいかもしれません。
除去やブロッカーを用意するか、小粒の飛行が気にならない太い攻め手を用意するか、統治者/イニシアチブはサイドアウト可能なサブプランにするか…など。
逆に《ギルドパクトの守護者》や《虹色の断片》、《○○の防御円》に対しては、無色であることが有効に働きます。
ブロックへの参加機会を増やす手段を考えます。
「殴れば自分だけ引ける」クリーチャー陣との差別化というだけでなく、前に挙げた統治者やイニシアチブと噛み合う意味でも有効です。
ただし、Pauperにおけるオーラや装備品は、盤面枚数に繋がらない(アド損しやすい)ことから「噛み合うデッキでないと活躍が難しい」という大原則は頭に置いておきましょう。ゴーレムとの噛み合いだけでこれらを採用するのは難しく、採用したくばデッキ自体をこれらと噛み合う形にする必要があります。
警戒付与によりアタックとブロックの両方に参加することができれば、誘発回数を2倍稼ぐことができます。
使い回せる《歩哨の目》《コーの矛槍》も良い感じですが、疑似的な除去になりうる《三つ目巨人の視線》も面白いですね。
アンタップエンジンによる疑似的な警戒付与も考えられます。
《移動駐屯所》はちょうど《吠えたけるゴーレム》が乗れるサイズですが、乗ってしまうとそのターンにゴーレム自身がアタック参加できなくなることには注意しましょう。他の乗り手も一緒に採用したいですね。
到達付与系のカード。
流石にメインから積むには怪しいですが、飛行相手のサイドボード候補にはなるかも?
今度はアタックへの参加を補助するカード。
メリットデメリットの話は、前章と同じです。
まずは飛行付与。
飛行自体が強い代わりに、《蜘蛛の陰影》など到達付与と比べて追加効果やコスパが微妙なものが多いです。
その中でも唯一《オルゾヴァの贈り物》は、3マナオーラという根本的な脆弱性はあれど、通した時のバリューは中々派手で良い感じです。
こちらはシンプルなアンブロッカブル。
占術や謀議もゴーレム自身と近い誘発条件なので、目指す動きが一貫します。
これらはアタック補助というより、アタックにボーナスを与える(=アタック補助カードと噛み合う)カードです。
特に《探検者の望遠鏡》は《液態化》などとも噛み合いますし、土地を伸ばしたい構築なら面白いと思います。
デッキのエンジンとして働き続ける意味でも、オーラなど補助カードを無駄にしない意味でも、ゴーレム自身が生き残り続けることが重要です。
まずはダメージ軽減。
単純に戦闘参加しやすくする意味もありつつ、赤や緑への除去対策にもなります。
ダメージ軽減と近い意味合いですが、こちらはテラーやマイアの処罰者などを相手取れない代わりに、黒除去対策にもなります。
通れば強いのは、やはりこれ。
多色相手は難しいとはいえ、除去の色が散っていない相手なら追加効果付き《ギルドパクトの守護者》なので、うまく通せればイージーウィンできてしまう場合もあるでしょう。
使い切りのオーラなど使う場合は微妙ですが、そうでないなら墓地からの釣り上げ呪文も選択肢に入ります。
具体的にはこれらです。
元のコストより軽く使い回しつつ、白の2枚はサイズも向上します。
おわり。
前回に引き続き、効果に独自性があるカードのシナジーを探すのは楽しいですね。